コロナ禍によって「住まい選び」の注目度が増している。東京都内の不動産市場は活況に沸いているようにも見えるが、気になるのは「将来の資産価値」だろう。不動産運用コンサルティングなどを行なう「リーウェイズ」は、AI(人工知能)を駆使して「10年後の不動産の資産価値」を独自に導き出している。同社の巻口成憲社長が説明する。
「多くの企業の不動産調査は、『いま売買したらどうなるか』にとどまり、将来の資産価値を予測するものは極めて少ない。我々は、2008年から収集している2億件を超える不動産情報をAIに学習させ、いまある都内の物件が10年後にどれだけ資産価値が変化するかを分析しています」
リーウェイズの分析は、不動産の最寄り駅ごとに現在のファミリー層向けの新築物件の資産価値が10年後にどう変化するかを詳細にレポートしている。『週刊ポスト』ではこれをもとに、東京で「資産価値が落ちやすい街」と「資産価値が落ちにくい街」に分けリスト化し、それぞれ上位50位までランキングした。
それによると、似通った地域や路線でも明暗が分かれている。たとえば、ともに山手線の北側にあり、昔ながらの下町という印象が強い巣鴨(落ちやすい29位)と日暮里(落ちにくい23位)には意外な差がついた。
長谷川不動産経済社の長谷川高氏は「街の勢いの差ではないか」と指摘する。
「かつての日暮里は中小企業の工場が林立し、地元で働く人が多く住むエリアでした。しかし2008年に足立区の見沼代親水公園と荒川区の日暮里を結ぶ『日暮里・舎人ライナー』が開業し、ここ10年ほどで再開発が進みました。
一方、『おばあちゃんの原宿』として知られる巣鴨は閑静で治安が良く、以前からファミリー層に人気だったため、資産価値は高止まりしている。これからの価値上昇はあまり期待できないでしょう」