高校の部活で、選手たちを支えるマネージャー。高校野球などでは、選手たちを支える女子マネージャーの仕事ぶりがクローズアップされるケースも少なくない。高校生を描くスポーツ漫画でも「マネージャー=女子」のイメージが強いが、なかには男子でマネージャーをやる生徒もいる。彼らはどういった経緯でマネージャーになり、その後はどうなったのか。ある男子マネージャーの経験を振り返る。
Aさん(30代男性)は高校時代、サッカー部のマネージャーだった。その高校は男子校で、日本代表選手も輩出している名門。個人技主体のサッカースタイルに憧れて同校を受験したものの、入部と同時に度肝を抜かれた。
「私は子供の時からサッカー少年で、サッカーにはかなり自信がありました。しかし高校でサッカー部に入ると、その自信はあっという間に吹っ飛びました。同級生たちのテクニックは明らかに私より上で、体力も段違い。1学年上には後にプロに進んだ先輩もいて、まるでレベルが違いました。練習時間は短いものの密度は極めて濃く、その一方で学校の成績が悪いと容赦なく留年です。正直、入学を後悔しました」(Aさん。以下同)
とりあえず半年ほど続けたものの、その差は絶望的だった。サッカー部を辞め、勉強に集中しようと思ったが、監督はサッカー界ではその名を知られた“鬼監督”。退部を申し出る勇気が無いままズルズルと部活動を続けていると、監督に呼び出された。
「最初は『辞めたいです』と言うつもりでした。けれども監督から『サッカーが好きなんだろ?』『選手以外でもサッカーと関わる道もあるぞ』と逃げ道を塞がれ、気付けば『マネージャーやります!』と言っていました。まぁ、言わされたようなものです(苦笑)」
全員自宅通学なので、マネージャーといっても炊事や洗濯をするわけでなく、仕事は純粋にサッカーのことだけ。とはいえ、長距離走のタイムを図ったり、紅白戦のビブスを用意したり、遠征の際に用具を運んだりといった雑務をせっせとこなし、監督の意に沿わず怒鳴られることもしょっちゅうだった。その姿を見た同級生からは同情されることもあったが、部員からの信頼は厚く、全国大会出場が決まった際には、エースストライカーよりも先に胴上げされたという。