卒業すると鬼監督が“仏”に
ここまででも十分な美談だが、その後も“マネージャーをやって良かった”ということだらけだったという。
「学校の成績はサッパリだったので、大学受験は諦めていましたが、監督の口利きもあって中堅私大に進学することができました。監督はとにかく顔が広く、面接に監督が付いて来て、『よろしくお願いします』みたいな感じで合格です。これも一種のサッカー推薦でしょうか。その後も母校のサッカー部には時々顔を出していましたが、その度に監督はご飯に連れて行ってくれました」
生徒が卒業すると鬼監督の態度が一変し、一気に“仏”になるのはよくある話。Aさんにはいつも、チームの状況を嬉しそうに説明していたという。そしてAさんが大学4年になった時、鬼監督の人脈が再びAさんの人生を左右する。
「私が『就職活動が大変です』とこぼすと、監督に『Yに会いに行け!』と言われました。Yさんは高校時代に全国大会で大活躍し、超名門企業で働いている大先輩です。私は戸惑いましたが、監督の命令なので、Yさんに会いに行くと、『君がAクンか。○○先生(鬼監督のこと)から話しは聞いてるから』で、事実上内定です。監督は大学だけでなく、就職先まで面倒をみてくれました」
Aさんは、不況でもまったく潰れる心配の無い名門企業で、今もサラリーマン生活を送っている。それもこれも高校時代の3年間、鬼監督の下で、地味な仕事をマジメにこなし続けたから。世の中には、日陰で咲く花もあるのだ。