田代尚機のチャイナ・リサーチ

過去最高値更新の米国株 先行き悲観派の意見とそれでも上がる現実

FRBは潤沢な資金を市場に供給し続けている(ジェローム・パウエル議長。Getty Images)

FRBは潤沢な資金を市場に供給し続けている(ジェローム・パウエル議長。Getty Images)

 米国株の上昇相場は、一体いつまで続くのだろうか。NYダウ指数(工業株30種)は7月16日に0.9%安、20日には2.1%安と急落した。しかし、その後は5営業日続伸、26日の終値は35144.31ドルで過去最高値を更新している。

 長期の動きをみれば2009年3月を底値として長い大きな上昇トレンドが出ているが、永遠に上昇トレンドが続くことはない。専門家の間でも「今は天井圏でのもみ合いで、今後は下落トレンドに転じるのではないか」と先行きを警戒する声が出ている。今回はそうした意見をまとめてみたい。

 悲観派代表格の一人として、スタンレー・ドラッケンミラー氏がいる。彼は1992年、ヘッジファンドの運用者としてジョージ・ソロス氏と共にポンド売りを仕掛け、イングランド銀行を打ち破ったいわば伝説のトレーダーだ。現在は投資家として活動しており、彼の発言は今でも市場関係者たちに大きな影響を与えている。

 彼がもっとも心配するのは、景気の過熱、それによって引き起こされるインフレの加速である。

 2020年3月の段階で米国は、2兆2000億ドル規模の積極財政政策を実施した。巨額の資金が社会に投じられたわけだが、その多くが投資ではなく、補助金の類やFRB(連邦準備制度理事会)による金融緩和の資金源などに使われた。2021年3月にも1兆9000億ドルの追加景気対策が行われたが、これも同類の刺激策だ。

 こうした政策の効果によりアメリカ経済はV字回復を果たしている。問題は、民主党がこの上さらに巨額のインフラ投資や、子育て、教育、医療保健など社会のセーフティネットを拡大させるための支出増などを進めようとしていることである。そうしたことから、この先は、景気が過熱、インフレが加速する可能性が高いと警戒している。

 さらに、ドラッケンミラー氏は株式でも、暗号通貨でも、不動産でも、バブルが起きていると主張している。

 株式市場では個人投資家の持ち株比率がどんどん上がっている。また、一部のヘッジファンドは買いポジションを急速に縮小させている。最後の投資家たちである個人投資家の買いが一段落したらどうなるか。歴史が示すようにバブル崩壊となるだろう。

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