コロナの感染急拡大に加え、開会式の楽曲担当ミュージシャンや演出担当が直前に辞任、解任に追い込まれる異常事態が続いた東京五輪。こんな状況下で、五輪をやる意味があったのだろうか──。選手たちは連日、必死の頑張りを見せているとはいえ、そんな思いが拭えないオリンピックとなった。
大会の“価値”を考えるうえで、重要な問いがある。「私たちは、この五輪のために、いくらツケを払わされるのか」である。
東京都と国の「大会経費」と「関連経費」の合計額は、都が1兆4519億円、国が1兆3059億円になる。この金額は都と国の一般会計から支出されており、財源はいずれも税金だ。
それだけではない。五輪閉幕後には国民と都民がさらに追加負担を求められる可能性が高い。その原因は、「無観客開催」による組織委員会の赤字だ。
組織委の大会経費の財源は、スポンサー料収入やIOC負担金、チケット売り上げなどで賄われているため、原則として税金は使われないことになっている。しかし、無観客開催になったことで900億円を見込んでいた「チケット収入」のほとんどが入らなくなった。
組織委の武藤敏郎・事務総長は7月20日の会見で「昨年大会が開かれていたら収支は調っていた自信があったが、今になっては無理なことはご承知の通り」と大赤字が不可避であると認めている。
東京五輪ボランティアの問題点を描く『ブラックボランティア』など五輪に関する著作があるノンフィクション作家・本間龍氏は「チケットの赤字は序の口」と指摘する。
「組織委の資金不足は深刻で、昨年末には東京都から調整金として150億円を借り入れていたほど。チケット収入は使ってしまって返金の財源に困っている。また、有観客開催のフルスペックを想定して会場の資材や飲食物の調達契約を結んでいるから、無観客でパーになっても業者への支払いは残る。感染対策費もかさんでいる。
そうした費用やチケット代の返金で赤字や追加負担は2000億円以上に膨らむ可能性がありますが、組織委は批判されるのが怖いから赤字の金額は大会が終わるまで言い出せないのでしょう」
公益財団法人である組織委員会の基本財産はわずか3億円(国と都が折半出捐)。巨額の赤字をまかなう資金力などない。