2018年に介護事業4社が合併して誕生したSOMPOケアは、介護業界2位の売り上げ規模に躍り出た。損害保険ジャパンなどを傘下に置くSOMPOホールディングスの一員である同社は、超高齢社会で今後ますます重要となる介護事業をどう牽引していくのか。遠藤健社長(67)に訊いた。
──このシリーズでは平成元年(1989年)当時について伺っています。
遠藤:私は1976年、安田火災海上保険(現・損害保険ジャパン)に入社しました。
安田火災といえば、1987年に創業100周年記念事業として、ゴッホの名画『ひまわり』を落札(約53億円)したことがよく知られていますが、同じ年にあるコンサルティング会社と一緒に、抜本的な事業改革プロジェクトもスタートさせました。平成元年当時の私は、そのメンバーとして働いていましたね。
──そこではどんな仕事を?
遠藤:特に力を入れたのが「フロンティア営業社員制度」の創設でした。なかなかいい人材が採れない、あるいは採用してもなかなか育たないというのが、保険代理店の慢性的な悩みでした。それを解消するため、接客や保険契約完了までのプロセスを細かくマニュアル化し、育成研修期間も3年間に拡大しました。
当時、このプロジェクトを通じて学んだのが、「難しいから面白い」と考える姿勢です。新プロジェクト立ち上げには様々な困難がありましたが、だからこそ達成感がありました。
「介護プライド」を発信
──損害保険ジャパンの専務執行役員、ジャパン保険サービス(現・損保ジャパンパートナーズ)社長などを経て現職に。保険業から介護事業への異例の転身となりました。
遠藤:これもまさに「難しいから面白い」ですね。介護事業の難しさは日々感じていますが、頭をひねれば色々と改善の余地はあります。
──まず何から取り組んだ?
遠藤:「現場を把握すること」と、「離職率低下に取り組むこと」の2つですね。
私は損保時代から「とにかく現場重視」という信念を持っていましたので、SOMPOケアの社長に就く前の顧問の頃から、130か所ほどあった介護施設の現場を順次、訪問しました。介護事業の現場が抱える様々な問題をできるだけ肌で感じたいと考えたのです。
また、社長就任から約4か月後の2016年4月には港区・芝浦に「SOMPOケアユニバーシティ」という研修施設をオープンしました。