キャリア

70代で精力的に活動する鎌田實医師 「中年期の危機」をどう乗り越えたか

現在も朝から晩まで医療現場の第一線に立つ鎌田實医師

現在も朝から晩まで医療現場の第一線に立つ鎌田實医師

 長寿時代の今。100才まで生きるとしたら、60代、70代はまだ、老後とは言えないかもしれない。その時期には、豊かな老後を送るためにやっておくことや見直すべきこともあるだろう。70代を迎えてもイキイキとした毎日を過ごす、医師で諏訪中央病院名誉院長の鎌田實さん(73才)に話を聞いた。

 鎌田さんは、長野県を「健康長寿1位の県」に導いた立役者。現在も朝から晩まで医療現場の第一線に立ちながら、執筆活動もこなす。そんな鎌田さんが「65才までにやっておいてよかった」と心から思うのは、意外にも食生活の改善だ。

「90才になっても健康なまま好きなように生きるための条件は、動脈硬化を起こさないことと、筋肉をつけておくことです。私は中年期から意識して、抗酸化作用のある野菜と、筋肉のもとになるたんぱく質をしっかり摂り、減塩する食生活に切り替えました。

 野菜は1日350gを目安に、たんぱく質は朝昼晩こまめに摂るように意識しています。高齢になっても日帰り温泉や観劇に行くなど好きなことができれば、人生が充実する。そのためには、中年期から食事と運動に気を配ることが大切です」(鎌田さん・以下同)

中年期の葛藤の乗り越え方

 地域医療に捧げた半生を、「後悔は一切ない」と振り返るが、決して順風満帆なだけではなかった。48才で発症したパニック症候群では、原因不明の頻脈や不眠に悩まされたこともある。その背景にあったのは、中年期に訪れやすい心理的な葛藤「ミッドライフ・クライシス」だった。

「40~65才にかけて人生が下り坂にさしかかると、環境や身体的な変化から、心理的な問題が起きる『ミッドライフ・クライシス』を経験することがある。特に会社員として先が見えてしまったサラリーマンや子育てを終えた女性など、明確な目標ややるべきことがあった人はなりやすいといわれています。

 私自身もそうでした。働きすぎによるストレスや、大きな仕事が終わった後の喪失感があったのだと思います。頑張って赤字の病院を黒字にして、達成感を味わったはいいものの、次の目的を見失ってしまった。ストレスから、冷や汗や動悸の発作が起きることもありました」

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