丹精込めて作った料理を一言「マズイ」と捨てる夫、気を利かせても何をしても怒る夫──別掲の4コマ漫画を読んで、「これ、うちの夫だわ」と思った人もいるのではないだろうか。そういった方は、まず自分が“モラハラ被害者”だという自覚を持つべきだ。そのうえで夫との関係を見直すことが、状況を改善する第一歩となる。
「昭和時代は亭主関白や夫唱婦随など、夫の支配に妻が従う関係が典型的な夫婦像とされてきました。しかし、平成の30年間で女性の社会進出が進み、求められる夫婦関係は、男女対等へ変わりました。そうした影響か、私のところにも、6~7年ほど前から、モラハラによる離婚相談が増えました」
こう語るのは、離婚問題に詳しい弁護士の齋藤健博さん。妻や子供への支配的な態度や考え方は、いまやモラハラという“精神的暴力”とみなされる。昔の男はみんなそうだった、父親はこうしていた、などと夫の行為を肯定し、がまんする必要はない。
「とはいえ、モラハラの加害者には相手を苦しめている意識がなく、むしろ正しい道を教えてやっているのだから、相手のためになる行為をしていると思い込んでいる人がほとんど。被害者が不満を訴え、話し合いをしようとも、自分が正しいと思っているので、歩み寄るのが難しいのです」
とは、横浜心理ケアセンター代表の椎名あつ子さんだ。まじめな女性ほど夫が決めた理不尽なルールに従い、怒らせないようにすることが生活の中心となる。そのうちに、自分の意見や行動に自信が持てなくなってしまうという。
「特にリモートワークで夫が家にいる時間が増えた昨今、モラハラに悩む妻が急増しています」(椎名さん)