元の会社と再雇用契約を結ぶのも最善策とはいえない
そば打ちやコーヒーなど、趣味をきっかけに“プロレベル”の腕と知識を身につけ、飲食店の開業を夢見る高齢者も意外と多いという。だが、安定した収入を得るのはハードルが高い。
「退職金をつぎ込んだり、借金までして設備投資するような大それたことは危険。開業してすぐは友達が来てくれるかもしれませんが、しばらくするとパッタリというケースが目立ちます。開業して稼ごうと安易に考えるのはやめた方がいいでしょう」
定年後の生活設計を専門とするファイナンシャルプランナーの三原由紀さんは、サラリーマンが起業したとき壁にぶつかる典型的パターンを指摘する。
「会社員として勤務してきた人は、仕事は与えられるものであり、自動的にお給料が振り込まれる環境が当たり前でした。しかし起業したら、営業から経理、総務まですべて自分でしなければなりません。“趣味”と“商売”の間には高い壁があるのです」
だからといって、勤めていた会社と定年後も再雇用契約を結ぶのが最善策ともいえない。
「定年を迎えた人の8~9割が再雇用を選びますが、ほとんどの場合65才までの契約です。これは老後の働き方と向き合うことを5年先延ばしにしただけで、根本的な解決にはなっていない。しかも、再雇用後は役職から外れ、給与は現役時代の半分から3分の1に下がるのが一般的。そうなると、やりがいを見失う人が多いのです」(高伊さん)
できる限り「介護離職」をしないことも大切
定年後の働き方に関して「安易に始めてはいけないこと」5選を、高伊さんの監修のもとにまとめた。
【1】定年後の「充電期間」
若い人でさえ、空白の期間がある人は企業から敬遠されやすく、ましてや定年後の場合は、「充電期間」ではなく「ブランク」とネガティブに捉えられることが多い。また、この間に長期の旅行などへ行くと、仕事への意欲を喪失してしまうことも。
【2】資格の勉強
中高年になると記憶力も体力も衰えるため、集中力が続かず、不用意に時間がかかることが多い。受講料や教科書代も必要となるため、よほど仕事で必要な資格でない限り、資格の勉強は時間も体力も金銭もムダになる恐れがある。資格商法にも気をつけたい。