人気タレントがイメージキャラクターを務めることが多いテレビCM。そんな中、ドラマの途中などで「皆さ~ん」などと呼びかけられて、思わず見入ってしまうのが、社長自らが自社商品を紹介する“社長CM”だ。いったいなぜ社長がCMに出演するようになったのか。通販事業と芸能事務所を手掛ける『夢グループ』(東京・文京区)社長の石田重廣さんに、CMに自ら登場するようになった経緯を聞いた。
福島訛りの優しそうな社長と昭和のスナックのママっぽい女性が登場する『夢グループ』のCM。
「一緒に出ている女性、社長の愛人じゃないの?」などと、あらぬ疑いを持った人も少なくないかもしれない。そこで、ぶしつけな疑問を投げかけると、「ハハハ。よく言われますが、彼女はうちの所属歌手の保科有里さん。スナックのママでも愛人でもありません」と石田さんは破顔一笑。
『夢グループ』は、シルクの靴下やジェルクッションなど売り上げ10億円以上のヒット商品が30品以上ある通販会社だが、その一方で、昭和歌謡ファン向けに「同窓会コンサート」などを主催する芸能事務所でもある。
「通販を始めたのは、私が30才の頃。取引先の日中友好団体の副会長から中国企業を紹介してもらったのがきっかけです」(石田さん・以下同)
初の広告媒体への出演は、中国製シルクシャツの折り込みチラシを作ったときだ。
「ぼくがモデルになったんですが、それを見たお客様から『せっかく高級なシルクなのに、こんな田舎臭くてダサいモデルを使うとは何事!』と電話口で叱られ、もう絶対に表に出ないと決心したんです」
その後も通販では、売れれば売れるほどクレームがくる。
「お客様から『社長を出せ!』と叱られ、『すみません、ぼくが社長です』と説明しても、『社長は“ぼく”なんて言わない!』と信じてもらえない。褒められることがほとんどなく、本当に厳しかった」