世界銀行のレポートによれば、世界には1日1.9ドル(約200円)以下で暮らす貧困層が世界人口の9.4%、7億3000万人もいる(2020年)。年収に換算すれば、わずか8万円以下にしかならないひとたちだ。──以下の記述では簡便化のため、1ドル=100円で計算する。
UBIの支給金額にはさまざまな案があるが、ここでは欧米で広く使われている「1人毎月1000ドル(≒10万円)」としよう。夫婦と子ども2人の家族なら月額40万円、年収480万円だから、憲法で定められた「健康で文化的な生活」はじゅうぶん可能だ。
アフリカや中南米、東南アジア、南アジアなどには、貧困のため将来になんの希望もない若い女性がたくさんいる。そこで日本人男性が18歳以上の貧しい女性と結婚し、妻が30代半ばになるまでに10人の子どもを産んだとしよう。これで、(子どものUBIだけで)月額100万円、年1200万円の収入が働かずに自分のものになる。
こうした取引は非人間的に思えるかもしれないが、最貧困の女性にとってはけっして悪いものではない。先進国での快適な暮らしと、たくさんの子どもたちとの「家族のきずな」が手に入るのだから。
だが話はこれでは終わらない。妻が出産適齢期を過ぎたら(慰謝料を払って)離婚し、18歳の女性と再婚してまた10人の子どもをつくることができる。男の場合は60代まで生殖能力があるから、これを3回繰り返すことはじゅうぶん可能だし、精子を冷凍保存しておけば生きているあいだずっと(100歳でも)子どもを産ませることができる。
こうした極端なケースを除いて、生涯に30人の子ども(男女半々)ができたとして、息子が同じように30人の子どもをつくり、娘は10人の子どもを産むとしよう。すると孫の数は600人(息子の子ども450人+娘の子ども150人)になり、月6000万円、年7億2000万円のUBIが入ってくる。
しかし、これでも話は終わらない。この孫のうち、男女が半々として、やはり全員が同じように子どもをつくるとすると、ひ孫の数は1万2000人になる。これでUBIは月額12億円、年144億円だ。もしあなたが20代前半でこれを始めたとしたら、30代で億万長者、80代か90代でビリオネア(資産1000億円)になれるだろう。
バカバカしいと思うだろうが、これは1家族の実現可能なシミュレーションだ。同じことをやる日本人の男が何万人、何十万人と出てきたら、いったいどうなるのか?