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結婚に失敗すると社会の最底辺に…「母子家庭の貧困問題」をどう解決するか

母子家庭の貧困問題を解決するには何が必要か?(イメージ)

母子家庭の貧困問題を解決するには何が必要か?(イメージ)

 日本の母子家庭の貧困問題が深刻化している。その背景には別れた夫(父親)の養育費の不払い問題があるが、普通に働く能力があっても、結婚に失敗しただけで貧困に陥る構図は理不尽と言わざるを得ない。では、それを解決するために、どんな対策が望ましいのだろうか。最新刊『無理ゲー社会』でリベラル化によって引き起こされた格差社会の構図を解き明かした作家・橘玲氏が、母子家庭の貧困問題を解決するための雇用政策のあり方を考察する。

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 日本は社会的な性差を示すジェンダーギャップ指数で156カ国中120位と世界最底辺で、それを象徴するのが、ひとり親(その大半が母子家庭)の貧困率が異様に高いことだ。平均的な所得の半分に満たないのが「貧困線」で、コロナ前の2016年のデータでは、日本は(年収122万円の基準を下回る)シングルマザーの貧困率がOECDのなかで韓国、ブラジルに次いで下から3番目で、「格差大国」のアメリカはもちろん中国より貧困率が高い。母子家庭の母親が働いて得る平均年収は243万円で、児童扶養手当などを入れても世帯年収は348万円にしかならない。

 日本の母子家庭のもうひとつの特徴は、就労率がきわめて高いことだ。母子家庭の81.8%が就業しており、これは女性が働くのが当たり前のデンマークやスウェーデンより高く、先進国で最高だ(アメリカやドイツは70%弱、イギリスは50%)。

 なぜこのようなことになるかというと、日本では就労可能性(働く能力)がある場合は生活保護を受給できないことも多く、身体的・精神的障害などによって働けないと認定された者以外は福祉事務所の就労指導の対象になる。その一方で、彼女たちの約半数が「パート・アルバイト等」の非正規の仕事をしており、正社員と非正規の「身分差別」によって劣悪な労働環境を強いられ、低収入の生活を余儀なくされている。

 母子家庭になるのは離婚したからで、貧困に陥るのは別れた夫(父親)が養育費を払わないからだ。責任は男にあるが、なぜか日本では、最近まで養育費の不払いはほとんど問題にならず、母子家庭の生活保護不正受給だけがバッシングされている。こうした日本社会の現状を見れば、若い女性が「結婚して子どもを産んでもなにひとついいことがない」と思っても無理はない。

 結婚とは赤の他人といっしょに暮らすことだから、続けられるかどうかは、やってみないとわからない。「やさしかった夫が、子どもができたとたんに豹変した」などという話はいくらでもある。結婚に失敗することは、誰にでも起こり得る交通事故みたいなものだ。

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