そもそも半導体の実需は増加し続けている。世界半導体市場統計(WSTS)は8月16日、市場規模の見通しを上方修正した。今年のグローバル半導体市場(規模)の伸び率について足元の需要が旺盛なことから、6月8日の予想を5.4ポイント上方修正し25.1%としている。
イノベーションが進み、半導体需要が構造的に増加しているのだ。例えば、自動車では自動運転技術の導入が急速に進んでおり、同時に新エネルギー自動車への代替が進み始めている。そのため、1台あたりに必要な半導体の数が急速に増えている。
5Gが本格的に普及しつつあることから、より高度なIoT(モノのインターネット)技術を搭載した電気製品が市場に出回り始めている。
メモリの増勢は強く、アナログ、ロジックも好調であることから、WSTSは2022年の半導体市場規模の見通し予想についても1.3ポイント引き上げ、10.1%増としている。コロナ禍で世界経済の成長率が大きく落ち込んだ2020年でさえ6.8%増であった。大きなイノベーションの波の影響を受けて、半導体需要は現在、大きな拡大期を迎えている。
グローバル株式市場では、米国の金利動向に関心が集まっている。マーケット関係者の多くが「人手不足、供給制約は解消に向かう。だから、物価上昇はピークアウトし、金利の急騰は起こらない」と考えているようだ。しかし、半導体の供給不足は解消されず、半導体需要の構造要因による増加、クリスマス商戦に向けた季節要因による増加が重なり、半導体価格の上昇は必至で、物価に影響を与えかねない。
足元では景気回復の足取りがしっかりしているとしてFRB(連邦準備制度理事会)は年内のテーパリング(出口戦略)開始を示唆しているが、思わぬ要因から、その時期が早まる可能性もありそうだ。株式相場はこれから秋にかけて、もう一波乱あるかもしれない。
文■田代尚機(たしろ・なおき):1958年生まれ。大和総研で北京駐在アナリストとして活躍後、内藤証券中国部長に。現在は中国株ビジネスのコンサルティングなどを行うフリーランスとして活動。ブログ「中国株なら俺に聞け!!」(https://www.trade-trade.jp/blog/tashiro/)も発信中。