競技場の外でも、こんなことがあった。アメリカのスポーツジャーナリスト、クロス・マクドゥーガルさんは、取材を終えて帰国するために羽田空港に到着した。
そこには、来日に感謝する看板を掲げたボランティアスタッフの姿があった。マクドゥーガルさんが、お礼の気持ちで五輪のピンバッジを渡すと、別のボランティアが「arigato」と記した扇子を彼に手渡したという。多くの日本人と「心の交流」をしたというマクドゥーガルさんが熱く語る。
「私の知る限り、今回の五輪で最もポジティブな気持ちになったのは、ボランティアや地元の人々との出会いでした。本来予定していたイベントへの参加がかなわず残念な面もありましたが、ボランティアのかたを通して限りなく温かい気持ちになりました」
まだまだ続くパラリンピックでのおもてなしについて、三宅さんは「特別なことは必要ない」と話す。
「日本にはおもてなしの文化があり、当たり前のことをやっていれば海外の選手や関係者が喜んでくれる。日本人にとっては『いやいや、名乗るようなことではありません』と恐縮するようなことでも、海外の人にとってはありがたいものです。パラリンピックで特別なことをするのではなく、五輪のときと同じように選手を応援する気持ちを持てば、相手には充分に心が通じるはずです」
五輪同様、パラリンピックも直接会場で声援を送ることはできない。それでも、選手たちの健闘を称えるとともに、私たち自身が心からパラリンピックを楽しむことができれば、それが何よりのおもてなしになるはずだ。
※女性セブン2021年9月9日号