体の衰えを感じ始めたり、子や孫が手を離れたりした折に、自らの最期を考え、不要なものを処分し始める人も少なくない。なかには、人生の最期を「いつ」迎えるかを決めた人もいる。
「ぼくは2035年9月2日に、北関東で皆既日食を見てから老衰で死ぬ予定です(笑い)」
そう語るのは、気象予報士の森田正光さん(71才)。
「地球上にいろんな自然現象があるけど、地球を明るくする太陽が一瞬のうちに消える皆既日食よりも素晴らしい現象はないと思います。2035年の皆既日食は東京ではなく北関東でしか見られず、しかも天候次第では見られないかもしれない。それでも、ぼくは85才になる14年後まで絶対に生き延びて、最後の皆既日食を必ず見ます」(森田さん・以下同)
人生のゴールを定めた森田さんは、そこにたどり着くための準備を始めている。
「まず、健康寿命をどれだけ延ばすかを考えて、大好きだったお酒をやめました。昔は原稿を徹夜で書いていましたが、いまは睡眠時間を確保するために夜更かしもしません。さらに健康を維持するために万歩計を携帯して、毎日1万歩以上歩いています」
すでに生活のダウンサイジングも始めている。
「若いときに買った重い机やスピーカーなどは売却し、家具もできるだけ動かしやすいものに替えています。現在は2LDKの住まいのうち、1部屋の半分くらいを資料や本などが占拠していますが、昔の資料というのは、思い入れがあって自分の手では捨てにくい。若い学生アルバイトに頼んで、学問的に役に立たない資料は捨て、昔の紙焼きの写真などはインターネット上に保存できるようスキャンをしてもらっています。
14年後には、もっと手狭なマンションで暮らすつもりなので、とにかく物を減らしてシンプルな暮らしにする必要があります」
一瞬で消える太陽をその目に焼きつけるため、万全の環境にしておきたい。そのためには、身の回りの物も人間関係も必要最小限が好ましい。森田さんは、これからの人生の「大きな目標」と「終活」を結びつけて考えている。
※女性セブン2021年9月16日号