米紙ワシントンポストは7月26日付のコラムで、来年2月に開催される北京冬季五輪について、中国・新疆ウイグル自治区でのジェノサイドや香港の民主化運動弾圧を理由に、スポンサー企業に対してボイコットするように呼び掛けた。
そのなかで、最上位スポンサーであるトヨタ自動車が、コロナの拡大や組織委内でのトラブルなどを理由に、東京五輪のCM放送を見送ったことに触れている。
「コラムなので、ライターの一意見にすぎないが、『トヨタは不幸なことに、違う五輪をボイコットしている』と、ボイコットすべきは北京だと主張している。東京大会から降りたために、トヨタの振る舞いが注視されるようになったのです」(経済ジャーナリストの小泉深氏)
スポンサー企業に圧力をかけているのは、米メディアだけではない。ノンフィクション作家の本間龍氏が語る。
「米議会で7月27日、北京五輪スポンサー企業に対する公聴会が行なわれました。『中国問題に関する議会・行政府委員会』に呼び出されたのは、コカ・コーラ、ビザ、エアビーアンドビー、インテル、P&Gです。
トヨタは日本企業なので呼ばれなかったようですが、北京五輪が近づけば、トヨタも呼び出される可能性があります。トヨタの立場からすれば、中国政府を刺激する北京五輪ボイコットはなかなか決断できないでしょう」
トヨタ単体(レクサスブランド含)の2020年の販売台数は、グローバルで870万台で、うち米国が211万台、中国が179万台となっている。米中ともにトヨタのメイン市場であり、どちらも捨てるわけにはいかない。
「H&Mやアディダスが強制労働で製造されている新疆綿は使わないと宣言したら、中国で不買運動が起きた。だから、ユニクロは怖がって見解を示さないでいるが、そうすると今度は、米国の税関で新疆綿の使用を疑われ、シャツの輸入を差し止められるという事態になっている。
トヨタも、北京五輪をボイコットすれば中国市場で打撃を受け、しなければ米国市場で打撃を受けるという、進むも地獄退くも地獄の状態に追い込まれてしまう可能性があります」(前出・小泉氏)