ご飯のおかずにも、お酒のつまみにも、お腹を満足させる主食にもなる万能の野菜といえば「じゃがいも」。スナック菓子でも多用され、一日にじゃがいもを口にしない日はないのでは。しかし、そんな“じゃがいも食べすぎ問題”が、健康へのリスクにつながっている現実がある──。
野菜の中でも最も身近で、あらゆるメニューに多用されるじゃがいもだが、健康に与える影響について考えたことはあるだろうか。取材を進めると、実は多くの専門家が日本人の「じゃがいも好き」に警鐘を鳴らしていることが判明した。
じゃがいもの原産は南アメリカ。9000年前から栽培されていたとされ、15世紀の終わりにスペイン人が南米から持ち帰ったことで欧州に広まった。食用にするようになったのは、深刻な食糧飢饉に悩むドイツのフリードリヒ大王が栽培を奨励したことによる。
その名残はいまも続き、ドイツでは主食としてじゃがいもが食べられている。ドイツ・フランクフルトに駐在する商社マンの妻が話す。
「たとえば大阪の家庭には一家に一台、たこ焼き器がありますよね。同じように、ドイツの家庭にはマッシュポテトを作るための、じゃがいもを潰す専用の道具があります」
日本にじゃがいもが入ってきたのは17世紀の初め。日本もドイツ同様、江戸時代の飢饉を契機に盛んに作られるようになったとされる。じゃがいもがいま、地球上でどのくらい作られているのか。世界で主食とされる食物の生産量はトウモロコシが10.3億トン、小麦が7.4億トン、米が4.8億トン。次いで、じゃがいもが3.8億トンだ。
管理栄養士の清水加奈子さんは、じゃがいもの栄養価の高さを評価する。
「日本標準商品分類では『ばれいしょ』として根菜類に含まれます。ばれいしょは、ビタミンCのほか食物繊維、カリウム、さらにマグネシウムなどのミネラルが豊富。エネルギーになりやすい糖質を含み、便通改善や美肌効果なども期待できる食材です」
アメリカ在住の内科医・大西睦子さんもこう話す。
「じゃがいもは脂肪とたんぱく質が非常に少なく、効率よくエネルギーを摂取できる食品です。そのうえ、生産する際の燃料コストが小麦の半分で済むため、低所得国の貧困層を飢餓から救う存在として期待を集めています」
かつて世界各地の飢饉を救ったように、現代でも重要なエネルギー源となっている。しかし一方で、先進国では深刻な「病気の元凶」ともなる可能性が指摘されている。