とはいえ、危険なのは自家栽培などで採れた未熟なじゃがいもで、一般に流通しているじゃがいもに食中毒の心配はほぼない。だからといって、決して安全とはいえないのが問題だ。
昨年2月、農水省は、これまで輸入できる時期を限定していたポテトチップス加工用の米国産生鮮じゃがいもへの規制を撤廃、輸入拡大に踏み切った。その舞台裏を東京大学大学院農学生命科学研究科教授・鈴木宣弘さんが明かす。
「収穫後に散布することが日本では禁止されているジフェノコナゾールという農薬(防カビ剤)が『食品添加物』に分類変更された。農薬のままでは散布できませんが、食品添加物に分類することで、アメリカがじゃがいもを輸出するとき収穫後に散布してもOKというルールに農水省が変えたのです。この禁止農薬は、マウス実験で発がん性、神経毒性が認められています。収穫後にこの禁止農薬が散布されたじゃがいもが、ポテトチップス用じゃがいもとして、すでに日本に輸入されています」
スーパーなどで売られている商品ならば、「国産じゃがいも使用」と明記されている商品を選べば避けることができる。厄介なのは外食だ。
「産地を見分けることができない外食の冷凍ポテトフライなどは輸入じゃがいもの可能性がある。外食で使われるじゃがいもは、遺伝子組み換えに関する表示義務がないことも問題です」(鈴木さん・以下同)
現在、生のじゃがいもは国産のものしか店頭に並んでいない。ところが、今後は日本のスーパーで、アメリカからの輸入じゃがいもが並ぶ可能性があるという。
「生のじゃがいもの輸入について、アメリカが強く要求しており、すでに協議が始まっている。押し切られて日本で売られるようになるのも時間の問題でしょう」
農薬汚染されたじゃがいもは、そのリスクを取り除くことが難しい。フランス在住のジャーナリスト・羽生のり子さんが話す。
「フランスで売られているじゃがいもは農薬がたくさん使われています。規定量を超えたとしてスーパーから回収されたケースもある。除草剤のほか、発芽防止の化学物質を収穫前に使っており、こうした薬品は、じゃがいもの中まで浸透してしまうので洗っても、皮もむいても落ちません」