ところで、職場における優越的な関係を背景にした言動が業務上必要かつ相当の範囲を超え、その結果、就業環境を害する場合、その言動はパワーハラスメントになると考えられます。ご質問のような職場の同僚集団による仲間はずれもその1つです。
厚労省は「過去に新型コロナウイルスに感染したことを理由として、人格を否定するような言動を行うこと、一人の労働者に対して同僚が集団で無視をし職場で孤立させること等は、職場におけるパワーハラスメントに該当する場合がある」としています。
職場のパワハラに対しては、パワハラ防止法に基づき、事業主にはパワハラ被害の相談体制の整備などの措置を講じ、従業員を啓発する等の義務があります。企業がこうした措置等を怠ると是正措置を命じられ、従わないと公表されることになります。
コロナ感染からの回復者に対する科学的根拠のないパワハラを放置して、その従業員を精神的に苦しめることになれば、安全配慮義務の債務不履行になり、使用者に慰謝料支払い義務が生じる場合もあり得ます。
とはいえ、新型コロナに大きな不安をもちながら、病気の実態についての認識が不充分なのが世間の実情です。まずは会社のハラスメント相談窓口に対し、回復者には感染力のないことを同僚に理解させて、ハラスメントをやめるよう指導することを求めるのがよいと思います。
【プロフィール】
竹下正己(たけした・まさみ)/1946年大阪生まれ。東京大学法学部卒業。1971年弁護士登録。射手座、B型。
※女性セブン2020年9月16日号