手指を消毒して店内に入ると、マスクとフェイスシールド姿の店員が出迎える。コロナ禍ではごく当たり前の光景だが、近い将来、ここにワクチンを接種済みかどうかが一目でわかるシールが加わるかもしれない。
大手外食チェーンの「ワタミ」は、全社員に接種を促し、2回目の接種が済んだ社員の名札に「接種済」のシールを貼ると発表。大手家電量販店の「ノジマ」も、2回目の接種を終えた従業員にすでにシールを配布。名札に貼った従業員が店頭に立ち始めている。政府も、ワクチン接種証明書──いわゆる「ワクチンパスポート」の導入を検討中だという。
「もとはといえば、ワクチンパスポートは海外への渡航手続きで使用するためのもの。政府は当初、国内での導入には慎重な姿勢を示していました。しかし、パスポートの導入で経済を活性化させたいとの声も多く、緊急事態宣言の解除後に活用に関するガイドラインが発表される予定です」(全国紙記者)
厚生労働省はホームページ上で《接種を受けることは強制ではありません。しっかり情報提供を行ったうえで、接種を受ける方の同意がある場合に限り接種が行われます》と示している。打つも打たぬも個人の自由ということだが、現実では、ワクチンを打っていない人に対し、冷ややかな視線が向けられている。
「同じ公園で子供を遊ばせているママ友とワクチン接種をめぐって、大きな溝ができてしまいました……」
涙声で語るのは、9月末に自治体主催の会場で1回目の接種をする予定だという埼玉県の加藤陽子さん(仮名・35才)だ。
「ママ友は、夫の職域接種を利用して、7月中にワクチンを打ったそうです。私が『打ちたいんだけど、なかなか予約が取れないし、主人が自営業だから職域接種が利用できなくて』と世間話程度に話したら、あからさまに距離をとられるように。しかも、私と子供が使った後の遊具をコソコソとアルコール消毒していたんです……。子供も何かを察したようで、『もう公園には行きたくない』と言い出しました。最近では公園に近づくだけで嫌な顔をされるので、“出禁”状態です」
接種の有無によるいじめを防ぐ教材も
“まだ打てていない”ではなく、“打たない”と伝えた場合、より強いバッシングにさらされる。大阪府に住む荒井加奈子さん(仮名・54才)は、そのすさまじさを目の当たりにした。
「ワクチンを打たないと公言する70代の叔母がいます。彼女はお盆の集まりに来なかったのですが、親戚たちは『打たないのは変な宗教に入っているから』『私たちに会いたくないから嘘をついている』などと悪口三昧。コロナ禍で楽しみが少ないなか、他人の悪口でストレスを発散しているようで、本当に嫌な気分になりました」