菅義偉首相が9月3日に退任を表明したことを機に、日本の株式市場は大きな上昇に転じている。8月下旬に2万8000円を割り込んでいた日経平均株価は、次期首相への政策期待の高まりから3万円台を回復している。
市場関係者の間では、自民党総裁選(9月17日告示、29日投開票)後に予定される衆院選を控え、さらに騰勢は強まると予想されている。カブ知恵代表の藤井英敏氏は、こう分析する。
「日本株は9月3日を境に景色が変わり、株価上昇の“ギア”が入ったと見ています。過去の例でも、1990年以来、過去30年あまりで衆院選は10回実施され、総選挙の投開票日までに株価はほぼ間違いなく上昇している。選挙期間中に株価が上昇した場合を『勝ち』、下げた場合を『負け』とすると、その間の日経平均の勝率は『10勝0敗』と100%に達し、TOPIX(東証株価指数)も『9勝1敗』と、これほど強いアノマリーはそうそうない。
まして支持率が下がっていた菅首相の退任で、総選挙の“顔”が変わるため、自民党は議席数を減らすのはやむないとしても、大きく負ける可能性は低くなったと見られている。まだまだ上昇が見込めるのではないでしょうか」(藤井氏、以下同)
とはいえ、最大の焦点は「誰が次期首相になるか」である。総裁選の告示を前に、岸田文雄・前政調会長、高市早苗・前総務相に続き、河野太郎・行政改革相が出馬を表明。石破茂・元幹事長や野田聖子・幹事長代行も出馬を検討してきたが、現時点では、岸田氏、高市氏、河野氏の三つ巴の争いになることが予想されている。
藤井氏も「誰が自民党総裁になるかで株価は変わってくる」と語る。
「まず河野氏は、ワクチン担当大臣として露出度が高く、ツイッターでも人気を集め、各メディアの世論調査などでも支持率が高い。もし河野氏で決まるようなら、国民的人気を背景に衆院選で自民党が大きく負ける可能性が低くなるため、日経平均はさらなる上昇も予想されます。ただし、河野氏も市場では緊縮財政派と認識されており、短期的にはともかく、長期的な株高は期待薄かもしれません。
それでも、すでにドル建て日経平均やTOPIXがバブル後最高値を更新しており、日経平均もそれに続く。今年に入って日経平均は3万1000円近くから2万7000円割れまで4000円ほど下がっており、その“倍返し”で、安値から8000円上昇した3万5000円になってもおかしくないと見ています」