コロナ禍により大きく変化したのが通勤への考え方。リモートワークの普及で通勤の必要がなくなったり、通勤の回数が減ったりしたことにより、郊外へ転居する人も増えているというが、逆に都心に引っ越してくる人もいるようだ。働き方だけでなくライフスタイルや価値観によっても、住まい選びのポイントは変わってくる。
外資系企業に務める都内在住のHさん(50代女性)は、通勤の頻度が下がったことが理由で、都心に転居した一人。Hさんの会社は渋谷。以前の住まいは、電車が15分で駅から徒歩5分。現在の住まいは、電車が5分で駅から徒歩15分。通勤時間は変わらないのに、なぜわざわざ引っ越しをしたのか?
「コロナ以前、毎日会社に行っていた時は、仕事が終わるとそのままオフィスの周辺で遊んだり、買い物をしたりして、最寄り駅に着いたら真っ直ぐ帰る生活でした。仕事で疲れている上、お酒を飲むことも多く、歩くのがイヤだったので、駅からすぐの物件を選びました。
しかし、リモートワークをするようになると、極端な運動不足になり、歩く必要性を感じました。また、当時の最寄り駅は典型的なベッドタウンだったので、結局都心まで遊びに出かけることになります。それなら駅から遠くてもいいから、都心に近くて駅前が栄えている場所に住もうと思い、引っ越しました」(Hさん)
勤め人にとって通勤時間は物件選びの重要なファクターとなる。近ければ近いに越したことはないが、当然予算の問題もある。Hさんのように「電車で5分+徒歩15分」と「電車で15分+徒歩5分」で、家賃が同じだった場合、人はどちらを選ぶのか?
「駅からの距離が遠くても良い」という人たち
契約社員のYさん(30代女性)は、「駅からどれだけ遠くても、会社に近い場所を選ぶ」という。その理由は明快だ。
「私の仕事は時間帯が不規則で、タクシーを使うことが多いのですが、交通費の精算が鬼門です。会社は六本木ですが、世田谷区の端っこに住んでいた時は、タクシーを1回使う度に7000円近くかかるため、月末に交通費を精算する度に、『高いな~』『どこ住んでんだよ』と嫌味を言われていました。それを理由にクビを切られたら困るので、慌てて会社の近くに引っ越しました。都心ではありますが、駅からはすごく遠いので、不便と言えば不便な場所です」(Yさん)