近年、オール電化住宅を始めとして、賃貸住宅も含めて多くの家庭で採用されることが増えているIH クッキングヒーター(以下、IH)。火災リスクが低い安心感や、手入れのしやすさなどから導入を決めた人も少なくないだろう。そうした中、昔からの馴染み深い存在である「ガスコンロ」を支持する人たちもまだまだいる。なぜ、ガスに魅力を感じるのか、両者の使い勝手はどう違うのか、ユーザーたちに聞いてみた。
IHは調理中暑くならないし、掃除も楽だが…
「ガスコンロが恋しいです。IHの方が便利だと思っていましたが、私にとってはそんなことはありませんでした」
そう本音を漏らすのは、メーカーに勤める30代男性・Aさんだ。これまで住んでいたマンションのキッチン設備はガスだったが、引っ越した先ではリフォーム後にIHが導入されていた。最初のうちはガスコンロにはない、IHならではの利便性を実感していた。
「引っ越したのが夏だったのですが、夏場はガスコンロだとちょっとした調理でも暑いじゃないですか。でも、IHだとあまり暑く感じなかったので『IH最高!』と思っていました。しかも、一人暮らし用のキッチンはスペースが狭いので、電源を入れていない時は平なプレートの上に物が置けることも利点。掃除も楽だし、感動しました」(Aさん)
だが、AさんはIHを使用していくうちに、そのデメリットも目に付くようになった。炒め物が好きで作る機会が多いAさんにとっては、重大な問題だった。
「まず、IH対応の鍋に買い替える必要があって、最初ちょっと面倒でした。それはまだいいのですが、私はチャーハンが好きでよく作るのですが、鍋を振るために持ち上げると『ピーピーピー』と音が鳴りだして止まってしまうのが鬱陶しい。どうやっても良い感じのパラパラにならずベチャベチャになってしまいます。ネットで〈IHでパラパラのチャーハンを作る方法〉なんかを検索して目下研究中ですが、やっぱり炒めものはガスコンロ+鉄のフライパンが一番な気がします」(Aさん)
大好きな「卵料理」で苦労が続く
新居に引っ越した際、IHにしたことを後悔したというのは、IT企業に勤める40代女性・Bさんだ。5年前、自身はガスを希望していたが、夫の「IHの方がスタリッシュでかっこいい。掃除もしやすいし一石二鳥」という言葉を聞き入れて、IHに決定したという。
「確かにIHの方が掃除が楽というのは事実ですね。でもガスもその都度拭くなどしておけば、そこまで手間ということもないとも思います。それ以上にやっぱりIHだと、おいしく作れる料理に制限があると感じます。IHは煮込み系はおいしくできますが、焼き物や炒め物、揚げ物には弱い。やはり、私的にはガスのグリルで魚を焼いた方が断然美味しかったし、唐揚げもガスの方がカリッと揚がりました」(Bさん)