──本来の「現金を引き出す」以外の用途がビジネスになっていく?
舟竹:キャッシュレス決済と現金決済の使い分けだと思います。何から何までオンラインでつながっていると、トラブルや障害があった時、個人情報などを抜き取られてしまうリスクもあります。
意外かもしれませんが、実は“ATMで現金をチャージしたうえで、買い物はキャッシュレス”という使われ方が増えています。オートチャージのほうが楽なことは分かったうえで、“それでも一旦、現金を介したほうが安心”という人も多いということです。
キャッシュレス化は推進しつつ、必要な時に現金が出し入れできる社会も残していくべきでしょう。我々がATM事業の最後のプレーヤーにとどまらなければいけないというある種の使命感もあります。
私たちは現金の利便性をATMによって社会に定着させました。目の不自由な方でもATMを使えるようにしたり、海外のカードを使えるようにしたり、あるいは画面の多言語対応も進めてきました。交通系電子マネーやキャッシュレス決済へのチャージなど、すべてが日本初の導入サービスです。
これからも、「あったらいいな」というニーズに応え、ATMをお客様の生活に寄り添う新しい多機能端末として進化させていきます。
【プロフィール】
舟竹泰昭(ふなたけ・やすあき)/1956年生まれ。1980年に東京大学経済学部卒業後、日本長期信用銀行(現・新生銀行)入行。2001年、アイワイバンク(現・セブン銀行)入社。専務執行役員(2013年)、副社長(2016年)などを務め、2018年6月に代表取締役社長に就任。
【聞き手】
河野圭祐(かわの・けいすけ)/1963年、静岡県生まれ。経済誌編集長を経て、2018年4月よりフリーとして活動。流通、食品、ホテル、不動産など幅広く取材。
※週刊ポスト2021年10月1日号