近年、大型台風や洪水といった自然災害が猛威をふるい、甚大な被害をもたらしているが、それに伴い「保険詐欺」が増えているという。国民生活センターに寄せられた保険詐欺にまつわる2020年度の相談件数は前年の2倍増に。彼らはどんな手口で近づいてくるのか。実際の被害実例を紹介しよう。
「親切な業者だと信用してしまった私にも落ち度がありました」。都内在住の60代男性が語る。
「田舎でひとり暮らしの母の実家の屋根が台風で破損しました。雨漏りに困っていると、すぐさま近所の工務店がブルーシートを携えて10万円で補修してくれたそうです。安心していたところに後日、その業者が再び現われて『屋根の葺き替え工事をしたほうがいい。台風の被害で火災保険が下りるから自己負担は不要です』と持ちかけてきた。母は『手続きもやってくれる』『親切な業者だから』と言うばかりで……」
男性はその後、業者が言ったようには保険金が下りずに母親が工事費として30万円を実費で払ったと知らされた。「はじめから保険金を目当てにした詐欺まがいの業者だったのでは……」と男性は不信を募らせている。
ここ数年、火災保険を巡るトラブルが全国で急増している。2020年度に国民生活センターに寄せられた相談件数は前年の2倍、5447件が報告されている(別掲図)。
日本損害保険協会広報室長の樋川明則氏が指摘する。
「2018年と2019年には大型台風が頻発しました。2018年9月の台風21号は火災保険の支払い金が約9400億円に上るほど。大災害に伴い、『保険金で無料で修理ができる』『保険金請求手続きを代行する』と業者が騙り、実際には保険金の支払い以上に修理費用がかかり自腹を切った、調査費用などを請求された、解約しようとしたら修理費の5割を違約金として払わされた、といったトラブルが増えたと考えられます」
そもそも、火災保険は台風被害などで自宅の修理が必要になった時、契約者本人が保険会社に申請手続きをし、工務店などが修理費用を見積もった上で保険会社に請求。保険金が下りる仕組みだ。
ただし、火災保険自体のルールが度々変わったために、その“隙間”を狙った不正請求の報告が相次いでいるという。