保険コンサルティングを行なう保険ヴィレッジ代表の斎藤慎治氏が解説する。
「2001年から『総合補償型火災保険商品』が増えたことが要因のひとつです。火事だけでなく、台風などの自然災害や盗難、漏水の損害なども多くの保険商品で補償対象となっています。実際、2018年、2019年と大型台風が頻発した時期には保険会社の保険鑑定人が不足したため、鑑定を簡素化して保険金をどんどん支払う傾向がありました。この時期には台風被害に便乗した不正請求がかなりあったと見られています。
2005年頃から、事故発生の通知期限が30日以内と短すぎることが問題視され、保険金請求の時効期限である3年以内の発生事故なら受け付ける方向になっていったことも大きい。『台風から3年以内なら被害を保険申請できますよ。期限はあと3か月です』などと持ちかけて保険金の3~5割を成功報酬として請求する代行業者が目立つようになりました。大型台風が少なかった2020年に相談件数が急増したのは、“過去の台風被害”だとした保険金申請が急増したからだと考えられます」
実際に国民生活センターに寄せられた相談事例を見ていくと、以下のようなケースが多い。
【パターン1】高額な診断費用を請求(60代女性)
「昨年の台風で破損した箇所を修繕できる。保険申請のサポートをします」と、工事業者が勧誘。家中を診断し、260万円を保険会社に請求したが、保険会社は「経年劣化」として14万円を提示。業者との契約を断わろうにも、高額な診断費用を請求された。
【パターン2】高額な違約金を迫られる(40代男性)
「台風の損害を保険で補償できるかもしれない」と電話で勧誘。後日、業者が訪問して修繕箇所を400万円と見積もり、保険の請求手続きの代行を行なった。しかし、結局保険金は下りず、工事を断わったところ見積もりの5割の200万円もの違約金を請求された。
【パターン3】無傷の瓦を破壊される(70代女性)
「瓦が飛んでいる。保険金で修理ができる」と、台風の後に工務店が訪問。無傷の瓦まで破壊し、「保険会社には黙っているように」と指示。工事には粗さが目立ったにもかかわらず、保険金150万円と見舞金30万円は、全て業者の取り分に──。
深刻なのは、パターン3のような場合は、契約者自身が詐欺に加担したかたちとなってしまうことだ。巻き込まれないようにしたい。
※週刊ポスト2021年10月8日号