砂ぼこりで洗濯物が汚れるのは現実的被害ですが、トラック運送は事業活動にとって不可欠であり、砂ぼこりを起こさないことは困難です。周りもある程度はがまんしなくてはなりませんが、住民の被害の程度がひどくて受忍限度を超えると被害者の平穏に暮らす利益を侵害する不法行為になり、合理的な対処を要求できる場合もあります。
受忍限度を超えているかどうかは、砂ぼこりの程度や被害の状況など侵害される利益の性質や内容とその程度、業者が講じている砂ぼこり防止対策などから判断されます。また事業活動の公共性も考慮されます。周囲の多くの住民が困っている事態になっていたり、健康被害の恐れがあれば、受忍限度を超えていると判断される可能性があります。
場内のトラック走行を徐行にする、出入り時に散水する、簡易の塀を建てるなどの対策でひどい砂ぼこりを防げる場合、業者にこうした措置を取るよう求めることは不合理な要請ではありません。こうした身近な生活公害では、被害者と加害者の協議による自主的解決が期待されています。
そこでまず業者に対策を求め、応じないときは、被害状況の証拠を用意して、被害を受けている住人と一緒に役所の生活環境の窓口で相談するのがよいと思います。
【プロフィール】
竹下正己/1946年大阪生まれ。東京大学法学部卒業。1971年弁護士登録。射手座・B型。
※女性セブン2021年10月14日号