──“普通の総菜”の扱いですね。
野並:決定打となったのが、田舎へ帰省する時にシウマイを持っていった知人の話でした。お土産のつもりが、「近くのスーパーでも売っているんだよなぁ」と言われたというのです。これでは“横浜の名物”ではない。そこで数年かけて全国のスーパーさんへの納入を順次、撤退していったのです。
──ローカル戦略に絞ってからのマーケティング戦略は。
野並:当時は商品に季節感がありませんでした。同じ商品を春夏秋冬、シーズンに関係なく売っていた点の改善に取り組みました。
お弁当のラインナップに季節ごとに旬の食材を用いた「季節のおべんとうシリーズ」を加えました。当初は春夏秋冬での展開でしたが、桜が散った4月中旬からは初夏向け商品も出すようになり、現在は5シーズン展開しています。
えびシウマイ、かにシウマイといった定番だけでなく、秋にはきのこシウマイを出していますし、昨年はチーズシウマイを発売したところヒットしました。商品の主役は変えずに“脇役”を変えるという発想です。
「通販」と「宅配」に活路あり
──コロナ禍の影響について聞かせてください。
野並:例年の4割以下まで売り上げが落ち込んだ月もありました。最も影響を受けたのは、新幹線の駅や羽田空港内の店舗です。無観客や入場制限で地元の横浜スタジアムでの販売も一時的に大きく落ちましたし、帰省が減ったことによってお土産需要も激減しました。
──行楽との親和性が高い商品の宿命ですね。
野並:一方、ロードサイド店の売り上げが伸びたことは光明でした。考えてみれば、誰だって1日3度の食事をすることはコロナ禍でも変わりない。飲食店さんが厳しい一方で、スーパーさんの売り上げがアップしたように、どこかの売り上げが落ちればどこかでは上がっている。そこでロードサイド店の強化に加え、通信販売や宅配のサービスも強化しました。
──そうした需要は伸びしろが大きい?
野並:通販は以前の2倍ぐらいに増えました。店頭販売していた商品をそのまま通販にするのではなく、専用商品を開発したことも奏功したと思います。
お弁当は通販に馴染まないと思われがちですが、冷凍商品にすればクリアできます。「横浜に行かないと買えない駅弁が自宅で気軽に食べられるので、横浜旅行した気分を食卓でお楽しみください」というコンセプトでアピールしました。
──今後の課題はどう考えていますか。
野並:コロナ禍によって訪日する外国人が一気に減ってしまいましたが、感染状況が治まれば復活するでしょう。そう考えた時に当社、ひいては横浜という街全体がコロナ前からインバウンドに弱かったことは否めません。
海外の方は冷めた料理を食す習慣があまりありませんし、そもそも赤レンガ倉庫や外国人墓地などの異国情緒を求めて横浜を訪れるのは日本の方です。外国の方々は、和を求めて東京なら浅草、あるいは富士山や京都などに行かれるでしょう。