10月31日投開票の衆院総選挙に向けて与野党が慌ただしく準備を進めているが、株式市場は岸田文雄・新総理の言動を受けて乱高下している。市場関係者が興味を向けるのは、「解散から投開票日」までの間に、株価がどのように値動きするかだという。
10月4日の就任会見で岸田首相が「金融所得課税の強化策」に言及すると、翌5日の日経平均株価は一時、前日終値から1000円近く急落。一気に2万7000円台に突入した。市場では“岸田ショック”との声も出たが、それに慌てたのか、週末に出演した民放の討論番組で岸田首相は「当面は金融所得課税に触ることは考えていない」と軌道修正すると、市場も安堵したのか、週明け11日の日経平均は前週金曜の終値から400円以上の値上がりを見せた。
9月中旬には3万円台をつけていた日経平均は今後、どのような値動きを見せるのか。鍵となりそうなのが総選挙だ。ある証券業界関係者はこう言う。
「株式市場には、合理的な理屈だけでは説明できない現象を“アノマリー”と呼びますが、そのひとつが『解散総選挙は買い』というものです。衆院解散前日(前営業日)の日経平均の終値から投開票日までの値動きを見ると、はっきりとした上昇傾向があるのです」
2000年以降に解散総選挙は7回あるが、たしかにいずれもこの法則の例に漏れない。
●2000年6月1日/1万6694.30円 → 同6月23日/1万6963.21円
●2003年10月9日/1万0531.44円 → 同11月7日/1万0628.98円
●2005年8月5日/1万1766.48円 → 同9月9日/1万2692.04円
●2009年7月17日/9395.32円 → 同8月28日/1万0534.14円
●2012年11月15日/8829.72円 → 同12月14日/9737.56円
●2014年11月20日/1万7300.86円 → 同12月12日/1万7371.58円
●2017年9月27日/2万0267.05円 → 同10月20日/2万1457.64円
とくに大きな値上がりがあったのは2005年、2009年、2012年の総選挙である。経済誌記者はこう話す。
「2005年は小泉純一郎・首相による郵政解散・刺客選挙で、2009年は民主党が地滑り的な大勝を収め、政権交代を果たした。2012年は安倍晋三総裁(当時)が率いる自民党が、民主党から政権を奪い返した総選挙です。いずれも勝利した政党が300議席前後を獲得する圧勝で、解散時点から変革への期待感があった。そうした空気が株式市場にも影響した可能性が考えられます。
逆にそれ以外の総選挙は与党が政権を維持する結果となっており、安定的な政権運営が期待できるために市場は好感したが、値動きは小幅にとどまることがほとんどだったのではないか。ただ、株式市場は政治にだけ左右されるわけではないので、完全に説明がつく現象ではありません」