中国には“金九銀十”といった表現がある。9月、10月は農作物が豊富に出回る時期であり、その心理的効果から消費が拡大する。不動産で特にそうした傾向が顕著である。しかし、10月1日から7日にかけての国慶節休暇の消費動向を見る限り、今年の“金九銀十”効果は不発に終わった可能性が高いようだ。
中国指数研究院が集計した重点観測都市の不動産取引データによれば、国慶節期間中の新築物件成約面積は昨年と比べ33%減少した。北京、上海、深セン、広州といった一線都市では昨年並みであったが、二線、三線、四線の主要都市では軒並み4割を超える落ち込みとなった。9月は様子見姿勢が強かったが、10月もそうした状況が続いている。
ここ数年、大都市で働く若者が、価格が安く、購入資格のある地元の三線、四線都市で不動産を買うのがブームとなっていたが、今回の国慶節ではそうした動きはほとんど見られなかったようだ。
新築住宅が増えなければ、家電、自動車の販売が伸び悩む。不動産開発は投資の4分の1程度を占めることからその不振は投資全体に大きな影響を及ぼす。しかし、投資ばかりではない。消費に対しても大きな影響があるということだ。
なぜこうした状況になったのか。当局はここ数年、経済政策に関する重要会議において「住宅は住むものであり、投機の対象ではない」と繰り返し指摘している。昨年9月からは強力なバブル対策を開始、不動産開発会社に対して総負債、純負債、流動性に関する3つの指標で分類し、融資を制限する「三条紅線」政策を行なっている。
もっとも、これらは、供給量を抑えるための政策、不動産価格の急騰を押さえるための政策であり、需要サイドとは無関係のはずだ。ただ、バブル対策として、金融機関を通じて投機需要の縮小も行われている。その影響が強く出ているのかもしれない。
実需と投機需要のどちらが大きいか
中国の不動産が国有企業による供給から市場経済による供給に変わったのは、1998年の住宅制度改革前後からである。住宅市場の歴史が浅い分、親たちの世代が子供に残せるような質の高い住宅は少ないのが現実だ。
一人っ子政策の影響もあり、男女比率がゆがみ男性の数が多い中で、女性が結婚の主導権を握っている。多くの女性が結婚のための必要条件として、親との同居を拒否するのと同時に、新居の購入を要求する。中国では“マンションを持たない男性は結婚できないシステム”が成立しつつあるようだ。
こうした実需が投機需要と比べ、十分大きいとの見通しから当局は果敢に不動産バブル対策を行っている。