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みずほ銀行システム問題の“病巣”は根深い 金融庁も背水の陣で対応

今後の検査次第では経営トップの去就問題にまで発展する可能性も(システム障害について謝罪するみずほフィナンシャルグループの坂井辰史社長=左ら。2021年8月。時事通信フォト)

今後の検査次第では経営トップの去就問題にまで発展する可能性も(システム障害について謝罪するみずほフィナンシャルグループの坂井辰史社長=左ら。2021年8月。時事通信フォト)

 みずほ銀行の相次ぐシステム障害を受け、金融庁は9月22日、同行と持ち株会社のみずほフィナンシャルグループ(FG)に業務改善命令を出した。しかも同行が自ら障害の原因を解明できていないことを受け、金融当局が実質的にシステムの管理に乗り出す――極めて異例の対応だと報じられた。

 金融庁は本誌・週刊ポストに「システムの更改や更新の緊急性などをみずほ銀行が判断、準備して、その計画を我々に提出してもらうということ。判断するのはみずほ銀行で、その報告を踏まえて我々が議論をする」という言い方をしている。

 金融機関でシステム障害などが起きた場合、金融庁が検査で原因の解明を進め、その結果に基づいて行政処分を下すのが通例だ。しかし、今回は全容解明が終わっていない段階で、検査を継続しながら業務改善命令を下すという異例ずくめの展開となった。

 前例のない対応に踏み切った金融庁を率いるのが、7月8日に長官に就任したばかりの中島淳一氏である。この中島氏が、異色の経歴を持つトップとして業界の注目を集めている。

 1985年に大蔵省(当時)に入省した中島氏は、「東大法学部」出身が当たり前のなかで、東大工学部計数工学科を卒業した経歴の持ち主。在学中はコンピューターで図形処理するプログラミングやAI(人工知能)の研究をしてきた。経済ジャーナリストの森岡英樹氏はこう評する。

「金融庁は多様な人材を求めて理系採用にも力を入れていますが、その先駆けのような人。初の理系出身トップとして注目を集めているが、本人は生真面目で地味な人柄で知られ、“ジミー中島”と呼ばれています」

“ジミー中島”がトップに立った今回の金融庁の対応について、その「リスクを取る姿勢」に驚きを隠さないのは、みずほ銀行OBで作家の江上剛氏だ。

「本来、銀行のシステムが金融庁の“公的管理”のもとに置かれるなんてあり得ない話です。かつて“大蔵省が箸の上げ下げまで口を出す”などと言われた『護送船団方式』の時代ならいざ知らず、いまは当局ができるだけ銀行に関与しないで自主性に任せる方針が取られています。当局が深く関与して何かあれば責任を問われます。役人というのは、できるだけ責任を押しつけたい生き物です。

 それでも管理に乗り出すというのは、みずほ銀行が“GHQ(連合国最高司令官総司令部)傘下の日本”になったようなものだ。

 ここまでシステム障害が相次ぐと、世間の批判が金融庁にも向かい、手を出さざるを得なくなったという事情もあるだろう。金融庁にとっても“背水の陣”であることは間違いない」

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