ともすると荒唐無稽や無謀との批判も出かねないホンダの挑戦だが、マネックス証券チーフ・ストラテジストの広木隆氏は、こう評価する。
「ホンダらしいフロンティアスピリッツを感じます。この前向きな姿勢は評価すべきでしょう。決して思いつきなどではなく、これまで培ってきたエンジンの燃焼技術や自動車の制御技術、燃料電池やロボットの技術などが宇宙開発に応用できると判断しているのです」
今、海外では民間による宇宙開発が進んでいる。かつて宇宙開発は国家事業としてコスト度外視で行なわれてきたが、民営化によるコスト削減の波が起きている。その波にうまく乗ったのが、イーロン・マスク氏がテスラと共に力を入れるスペースX社で、格安の打ち上げ費用を実現し、アメリカの宇宙事業に食い込んでいる。
民営化により打ち上げが低コストになれば、宇宙ビジネスが活性化して市場が拡大する。ホンダもその市場を狙っているとみられる。
市場規模は300兆円
宇宙ビジネスコンサルタントの大貫美鈴氏はこう語る。
「宇宙事業の市場規模は、2040年代には100兆円を超え、さらにバンク・オブ・アメリカの試算によると2040年代後半には300兆円にまで伸びるとされています。
自動車産業は宇宙事業との親和性が高く、特にこれから期待が高まると考えられます。宇宙事業が本格化すれば、高頻度で打ち上げを行なうことになり、ロケットや衛星の部品をたくさん高品質に、かつ安いコストで作る必要があります。
従来の宇宙企業や宇宙ベンチャー企業にはそのノウハウがあまりなく、この分野でも優位性を持つのが、自動車などの製造業です。スペースXも、ドイツの自動車メーカーからの招聘で製造ラインを設計したほどですから、自動車産業の宇宙事業での活躍に大きな期待を寄せています」