かつては家電などの一般消費者向け製品を製造し、ヒットを飛ばし世界から注目を集めていた日本メーカーも、現在は事業を多角化させグループで業績を上げるなど、その稼ぎ方の様相が変わってきている。
NECも、かつてはPC98シリーズでパソコン市場の8割を占有する時代があったが、2011年に中国レノボと合弁会社を設立し、さらにその下に子会社を設立してパソコン事業を移管し、製造からは撤退している。ソニーが売却したVAIOと同様、ブランドは残ったが、NEC自体はもはやパソコンの会社ではなくなっている。
「かつてNECは、パソコンだけでなく携帯電話や家電製品も製造していましたが、2000年ごろから大リストラを始め、今はそうした製造事業から撤退している。事業改革で、一般消費者向けのビジネスをやめて企業向けビジネスに特化した。もともとNECは一般消費者向けの商売が苦手だったので、得意な分野に絞ったということです」(電機、IT業界を得意とするコンサルティング会社AMC代表の安田礼一氏)
そのおかげで業績は好調だ。同社の2020年度3月期の純利益は前年比で倍増の1458億円で、今年度はさらに約200億円アップを見込んでいる。しかし、パソコンや携帯、家電を捨てて、いったい何で稼いでいるのか。
「よく知られているのが宇宙事業で、小惑星探査機『はやぶさ』の通信技術の多くがNECのものです。顔認証や指紋認証など生体認証の技術や、それに付随するAIの技術にも定評があります。携帯電話からは撤退しましたが、携帯の通信基地の技術は今も提供していて、5G向けの電波塔がこれから増えるので、業績が伸びるはずです」(同前)