新型コロナウイルスの感染者の激減とともに、少しずつかつての日常が戻りつつある。街の人通りが増えて電車が混雑するようになり、飲食店で酒を酌み交わす人の姿が目立つようになった。なかでも急速に活気を取り戻しているのが「旅行」業界。東京都在住の40代主婦が驚いた顔で語る。
「10月末に家族旅行をしようと旅行代理店に電話したら、同じような申し込みが殺到していて、1週間近く来店予約が満杯とのことでした。いまは代理店に行くことすら難しいんですね。緊急事態宣言も出ていないので年末には2年ぶりの帰省を考えていますが、早めに動いた方がよさそうですね」
全日空によると、10月の国内線の1日の平均予約者数は約5万人で、9月上旬より10倍に増えたという。
「JR東日本でも新幹線や特急など指定席の1日あたりの予約数が、10月に入ってからは9月末より4割増えました。旅行代理店やバスツアーの申し込みも軒並み急増しており、九州のある旅行会社は宣言解除後の予約数が前月同期で3倍になったそうです」(旅行代理店関係者)
新型コロナで旅行や帰省ができなかったから、年末年始こそどこかに行きたい──そう計画する人は多いはずだ。
「でも、今年の年末年始は大変なんですよ」
そう語るのは、トラベルジャーナリストの橋賀秀紀さん。
「来年は元日が土曜日です。三が日が明けた4日の火曜日にはさっそく仕事始めをする人が多いはずで、カレンダー上の正月休みは最短といっていい。その期間に旅行者が集中すれば、予約はかなり取りづらくなる」
橋賀さんが危惧するのは「国内旅行の過熱」だ。
「ワクチンパスポートがあれば隔離期間が不要という外国は増えていますが、いずれにせよ帰国時には10日間の自宅隔離を余儀なくされます。それを嫌がって海外旅行を避ける人が国内旅行に切り替えると、国内の人気スポットに人が集中するおそれがあります」(橋賀さん)