お金では買えない「つながりの幸福」
明治大学大学院情報コミュニケーション研究科講師で行動経済学者の友野典男さんは、幸せには、お金のほかに、「仕事」「健康」「人間関係」が不可欠だと話す。
「一定の収入を超えると幸福度が下がるのは、仕事のプレッシャーなどが増えることで、健康が害されるからとも考えられます。多忙すぎると、人間関係も充実させられなくなり、幸せになるための要素が欠けてしまう。“仕事”と“人間関係”は、失うと幸福度を著しく下げることがわかっています」(友野さん)
幸せのために「人間関係」の充実度がいかに重要かを示す例がある。2011年の東日本大震災後、地震や津波であらゆるライフラインが止まったとき、東北の各地で町内会が配給を取りまとめ、人々の間に「つながり」をつくった。アンケート調査によれば、震災後は生活満足度は著しく下がったものの、幸福度はむしろわずかに上がっていたのだ。
「震災後、町内会のかたに伺ったところ、その後しばらく、町内会の入会率が上昇したそうです。日本は助け合う文化があるといわれていますが、いま、実際は人間関係が希薄になっている。奇しくも、震災が人と人との助け合いやつながりの大切さが見直される機会になったといわれています」(前野さん)
こうした「つながりの幸福」は、決してお金では買うことができず、失って初めて気づくものだと、樺沢さんも言う。
※女性セブン2021年11月4日号