2012年から毎年国連が発表している「世界幸福度ランキング」という調査がある。世界150以上の国と地域を対象とした大規模調査で、アンケートやGDP(国内総生産)、社会保障制度、人生の自由度や他者への寛容さなど、さまざまな項目を加味してジャッジされる。
実はこの調査で、日本は例年、順位が振るわないのだ。2021年の最新ランキングでも56位と、G7(先進7か国)の中でも最下位だ。
いまだにセルビアとの国境で緊張が続くコソボ(33位)や、コロナの感染爆発が起きていたブラジル(35位)よりも下である。明治大学大学院情報コミュニケーション研究科講師で行動経済学者の友野典男さんは、この結果は日本人の気質が反映されていると指摘する。
「幸福度を他国と比較することには、まったく意味はありません。この調査の根幹はアンケート。日本人は控えめな気質ですから、“あなたはいま幸せですか?”と聞かれても、“それなりに幸せだけど、もっと上がいるから”と考えます。他国のように、恥ずかしがらずに“イエス!”と断言できる人が少ないのです。東アジアに共通する傾向なのか、中国(84位)も韓国(62位)も、同様に幸福度は高くありません」
一方、南アジアにあるブータンは、発展途上国ながら2013年には北欧諸国に続いて世界8位となり、“世界一幸せな国”として広く知られるようになった。国民が皆一様に「雨風をしのげる家があり、食べるものがあり、家族がいるから幸せだ」と答える姿が報じられたのを覚えている人もいるだろう。
しかし、ブータンは2019年度版で156か国中95位にとどまって以来、このランキングには登場していない。
「かつてブータンの幸福度が高かったのは、情報鎖国によって他国の情報が入ってこなかったからでしょう。情報が流入し、他国と比較できるようになったことで、隣の芝生が青く見えるようになり、順位が大きく下がったのです」(友野さん・以下同)
それまで幸せを感じていても、人と比べ始めたとたんに幸福度が下がる。精神科医の樺沢紫苑さんが言う。
「日本の幸福度が低いのは、他人と比べたがる気質も関係しているでしょう。精神医学においても、他人と比較する人は幸せになれないことがわかっています。欧米人は、他人と自分を比較したがらない。横並びを嫌い、収入、学歴、容姿、ファッションなど、さまざまな要素で他人と違うことを好みます」