新型コロナウイルス感染症のワクチン接種証明書や陰性証明書を提示することにより行動制限を緩和する「ワクチン・検査パッケージ」の実用化を政府が急ピッチで進めている。10月に入ってからは旅行会社や飲食店の協力を得て、実証実験も行われている。政府は年内にも、書類形式ではなく、スマホなどで表示するデジタルの「ワクチンパスポート」を導入する方針だ。
民間初のワクチン接種証明アプリ「ワクパス」も始まる。ワクチン接種証明書と顔写真付きの身分証明書をワクパスに登録すると、参加企業の特典サービスを受けられる仕組みだ。アパホテルのチェックアウト1時間延長、かっぱ寿司の会計10%オフなどのお得メニューが並ぶ。JT(日本たばこ産業)、HISなども名を連ね、今後はさらに“サービス”が増えていくと予想される。
にわかに期待が高まるワクチンパスポートの意義を、国際医療福祉大学病院内科学予防医学センター教授の一石英一郎さんが解説する。
「そもそもワクチンパスポートとは、ワクチンを接種したことを証明する書類などの総称です。パスポートを提示することで飲食、文化・スポーツ施設、イベントなどに参加できます。海外では入国の際に一般のパスポートと同様に、ワクチンパスポートの提示を義務付ける国があります」
ちなみに、日本で政府が進めるワクチンパスポートの正式名称は「新型コロナウイルス感染症 予防接種証明書」。生年月日やパスポートナンバー(旅券番号)のほか、接種したワクチンの種類、接種年月日などが記載される。
民間主導のワクパスのようにワクチン接種の「ご褒美」としてさまざまな特典サービスを受けられるケースも多く、今後もいろいろな場面でパスポートの恩恵を受けられそうだ。医療経済ジャーナリストの室井一辰さんが指摘する。
「一部の団体旅行では利用者の安全確保の観点から、ワクチンを接種しなければ参加できないイベントを行っています。この先、政府も同様の手を打ち、ワクチンパスポートがないと『Go Toトラベル』や『Go Toイート』などのキャンペーンが利用できなくなる可能性があります。実際、岸田首相は『Go Toトラベル』と『ワクチンパスポート』を組み合わせた『Go To 2.0』という新たな計画を考えています」
すでに地方や民間には、ワクチン接種者を対象にしたお得な特典があふれている。たとえば沖縄・石垣島は72時間以内のPCR検査の陰性証明もしくはワクチン接種証明書を提示すると島内の宿泊、飲食、土産物、レジャーなどで割引などの特典・サービスが受けられる「あんしん島旅プレミアム」を実施している。神奈川県横須賀市でも2回接種の証明書を提示すれば、市内の協力店舗で多様な特典やサービスを受けられる。