──社長就任を現実的に意識するようになったのはいつ頃ですか?
遠藤:2018年の創業110周年に際して、副社長として中期(3か年)経営計画をとりまとめ、その中では「次の時代に向けた提案」も盛り込みました。奇しくも、その年は父が社長に就いた年齢と同じ33歳ですね。
私自身は「自分が主導して立案した経営計画を完遂することで、社長就任への助走期間としたい」と父に宣言していました。その3か年を経ての社長交代は、昨年末に父と確認していましたね。
「紙製カミソリ」開発の狙い
──コロナ禍で“満を持しての登板”に誤算が生じたのでは?
遠藤:売り上げの良し悪しはありますが、基本的に我々が手がける商材は、景気がいい時に飛躍的な成長をしない代わりに、不況でもさほど大きく落ち込まないのです。
コロナ禍直前までは、インバウンド需要で爪切りが大きな売り上げを占めておりましたが、外国人観光客の方々がパタッと消えて以降、大きく落ち込みました。また、マスク着用生活で男性のひげ剃りの頻度が減り、女性もお化粧で使う道具が減るということで、カミソリや関連商材が低迷しています。
一方、家庭での食事が増えたことで料理に関連した道具の需要は上がります。「関孫六」ブランドの包丁を筆頭に、調理ハサミやピーラー、あるいは包丁の砥石など、調理器具類は前年比で2割から3割増しになりました。お子さんのいる家庭のニーズなどもありお菓子作りの道具なども好調でした。
──売り上げの約半分を占める海外では?
遠藤:海外では2000年から「旬」というブランド名で販売している1万円台~の高級包丁がメイン商材になっており、累計販売で900万丁を超えるロングセラー商品です。
また、当社のルーツはポケットナイフ製造ですが、先の大統領選の混乱時には、アウトドア用のみならず、護身用としても需要が増えたようです。治安が悪化することを喜ぶわけにはいきませんが、様々な社会要因が売り上げに影響するということでしょうね。