ただ、あなたは新品、または未使用の状態のスニーカーを購入したのだと思います。履いて使っていたので、買ったときの5万円の価値のままだったとはいえず、減価しているのが普通です。使用により、減価した結果である汚損前の元の価値の額が損害になります。なぜなら、失ったもの以上の賠償は請求できないからです。また、靴の使用による減価の程度に基準はないので、耐用年数や使用済みの期間、損耗の程度に基づく交渉になります。ネットのオークションサイトなどで中古品の相場がわかれば、参考になるでしょう。
なお、特別な愛着がある思い出の品とか、記念品の場合には、財産的価値の他、失ったことによる精神的苦痛に対し、慰謝料の支払いが認められる場合もあります。
レア物のスニーカーというだけでは難しいとは思いますが、この観点から、慰謝料分の上乗せの交渉をしてみてはいかがですか。
【プロフィール】
竹下正己(たけした・まさみ)/1946年大阪生まれ。東京大学法学部卒業。1971年弁護士登録。
※週刊ポスト2021年11月12日号