10月の当連載で、中国では石炭価格が急騰していることに言及したが、その先物価格が現在、急落している。鄭州商品取引所に上場する動力石炭主力先物価格(主に発電用として使われる石炭に関する先物取引の中心限月価格)をみると、10月19日には高値1982元/トンを記録したがその後急落。11月1日は917.6元/トンまで下落しており、9月初旬の水準まで戻している。
いったい、何が起きているのか。当局が石炭メーカーに対して厳しい行政指導を開始したのである。
証券・先物業者を監督管理する立場にある中国証券監督管理委員会(証監会)は10月20日、記者会見を開いており、報道官は次のように見解を述べている。
・今年に入り、動力石炭などのバルク商品の先物価格が上昇しているが、この点について、証監会は党中央、国務院などの要求をしっかりと受け止め、自ら主体となってマクロコントロールを実施する。
・バルク商品の供給・価格を安定させ、先物市場の監督管理を強化する。積極的に主動し、取引所に対して手数料基準を引き上げさせ、取引量を縮小させ、限月商品の範囲を拡大するなどの対応策について検討する。断固として過度な投機を抑制し、悪意の取引を撲滅する。同時に、先物市場の違法違反行為に対して、全く容赦しないといった強い態度で臨み、価格操作などの違法行為を打ちのめす強度を高め、市場の良好な秩序を維持する。
経済・社会発展戦略の策定に深く関与し、経済体制改革を総合的に指導する立場にある国家発展改革委員会(発改委)は、10月19日から31日にかけて合計で20件に及ぶ石炭価格の急騰を防ぐための措置を発表している。
石炭、電力、天然ガス、運輸関連の重点企業の代表などと座談会を開き、悪意の先物取引について厳しく検査し、石炭の供給・価格を安定させるよう地方に出向き監督指導を行い、石炭の価格、コストの実態調査を行い、違法な石炭貯蔵を行っていないかについて厳しく精査し、石炭メーカーが暴利を得ていると判断する基準を作るなどの措置を行うと強調している。
結局、国家が先物市場の投機行為、違法行為を厳しく抑え込み、実物取引については石炭メーカーが行っていた在庫隠し、価格吊り上げ行為などを厳しく抑え込むと宣言したことで、先物価格の急騰を封じ込めることができたのである。