「市場の失敗」を前提とした経済コントロール
10月29日午前、発改委は全国すべての石炭を産出する省、重点石炭メーカーに対して行った生産コストの実施調査について、その結果を発表した。石炭の生産コストは現在の石炭スポット価格を大幅に下回っており、石炭価格は引き続き反落する余地があるとしている。
さらに、発改委による一連の政策により、石炭の生産量、在庫量共に大幅に回復。石炭のスポット価格は産出地域、品質レベルで細かく価格が設定されていて平均値を示しにくいが、最近の個別データを拾ってみる限りでは価格は着実に下がっている。
中国の経済システムには欧米日とは異なるところがいくつもあるが、最大の違いは市場の失敗が頻繁に起こるという前提で国家が経済を直接コントロールしているという点だろう。
欧州を中心にエネルギー価格が急騰している。それが原因となり、インフレが加速するリスクが日増しに高まっているが、果たして、エネルギー価格急騰は本当に需給逼迫だけが原因なのだろうか。そこに悪意の投機などによる影響がある可能性もある。
米国では労働力が不足し、それが輸送面でのボトルネックとなっているが、それはすべてコロナ禍に起因するもので、仕方のないことだと言えるのだろうか。
自己の利益を最大化することだけを目的として事業を行う企業や、自分の利益だけを大事にして生活する消費者を野放しにしておくのであれば、SDGs(持続可能な開発目標)など達成できるはずがない。市場万能主義を排した中国のやり方、市場をしっかりと管理するシステムは、自由主義国の政府にとっても参考になる点があるかもしれない。
文■田代尚機(たしろ・なおき):1958年生まれ。大和総研で北京駐在アナリストとして活躍後、内藤証券中国部長に。現在は中国株ビジネスのコンサルティングなどを行うフリーランスとして活動。ブログ「中国株なら俺に聞け!!」(https://www.trade-trade.jp/blog/tashiro/)も発信中。