将来の医療サービスを大きく変革すると目されている「オンライン医療」サービスだが、現段階での評価はどうなっているのか。医療業界にイノベーションを起こせるのか。中国企業の事例をもとに分析してみよう。
その期待値の高さとは裏腹に、現段階で株式市場の評価は、とても厳しいように見える。中核企業の株価が大きく下落しているのだ。いったいどういうことなのか。
平安保険(02318)の関連会社で業界トップの平安健康医療科技(01833)は2021年2月16日に148.5香港ドルの過去最高値(場中ベース)を付けたが、その後長い下落トレンドを形成している。
直近の動きでは、10月21日の場中で付けた56.4香港ドルが戻り高値で、そこから急落、11月8日の場中では29.45香港ドルの安値を記録した。過去最高値からの下落率は80%、直近戻り高値からは48%も下落している。
アリババの子会社で平安健康医療科技の最大のライバルである阿里健康(00241)も同じような株価の動きとなっている。今年2月の最高値から11月3日に記録した安値までは71%下落、10月下旬の戻り高値からは33%下落している。
はたしてオンライン医療サービスは今後、医療業界にイノベーションを起こせないのだろうか。その点について答えを出す前に、株価はなぜ下落したのかを確認しておく必要があるだろう。
まず、2月以降の大きな下落トレンド発生の要因について、2つほど理由が考えられる。一つはそれまでの急騰がバブルであったこと、もう一つは事業の拡大ペースが予想されたほど速くないこと、黒字化への道筋が見えないことである。
平安健康医療科技の業績の中身
平安健康医療科技に絞って話を進めると、上場(香港市場)は2018年5月だが上場直後の株価過熱がひと段落した2019年1月4日に場中で23.6香港ドルに下落、過去最安値を記録した。とはいえ、オンライン医療サービスへの市場の期待は、依然として根強い。
また、2020年に入ってからは新型コロナウイルス感染拡大により医療現場が混乱、当局が厳格なコロナ対策を実施したことにより、新型コロナウイルス感染症以外の疾病に対する医療サービスの量、質が、ともに著しく低下した。そのことがオンライン医療サービスへの実需を高めただけでなく、“AIを活用した先進的な医療サービスの将来性”が消費者、投資家たちの期待を集めたことで、株価は急騰した。