グローバル市場の先行き懸念材料として、中国の不動産問題がクローズアップされている。具体的には、不動産開発大手・恒大集団の破綻に加え、不動産企業のデフォルト懸念が意識されている。この点について中国人民銀行幹部は10月15日、第三四半期金融統計公表に関する記者会見で、次のような主旨の発言している。
まず、恒大集団の経営危機問題であるが、これはあくまで個別企業の問題であり、業界全体の問題ではない。国内の土地価格、不動産価格、それらの市場見通しはいずれも安定している。大多数の不動産企業の経営は安定しており、財務指標は良好で、不動産産業全体をみれば健全であると強調している。
恒大集団の資産規模は2兆元(35兆4000億円、1元は17.7円で計算、以下同様)を超えており、この内、不動産開発プロジェクトに関する部分は60%を占め、子会社は1000社以上に及ぶ。ここ数年、同社の経営には問題があった。市場の変化に基づき慎重な経営をすべきところを逆に拡大路線を進め、経営、財務状態を著しく悪化させ、最終的にリスクを顕在化させてしまった。
ただし、恒大集団の総負債の内、金融負債は3分の1にも満たない。債権者は比較的分散しており、個別の金融機関におけるリスクエクスポージャーは小さい。金融業界全体に対して与えるリスクはコントロール可能であると強調している。当局は簿外資産を含め、徹底的に恒大集団の財務内容を調べ上げている。破綻による金融市場への影響について、過度に心配する必要はないという主張だ。
不動産企業が発行するドル建て債券の価格が大幅に下落している点については、一部の個別企業でデフォルトのリスクが高まるような状況で価格の下落は当然である、と言っている。
中国人民銀行内で各部署がそれぞれ関心を持って市場の変化を見守っている。発行体や株主が、市場の規律規則を厳格に順守し、市場化、法治化の原則に照らし合わせ、適切に処理し、法律で定められた債務義務を積極的に履行するよう指導していると強調している。
当局は無責任なデフォルトは許さない。とはいえ、当局によって守られる優先順位は国内の金融市場が第一であり、次に国内の債権者である。海外の金融市場や債権者は順位が低い。今後、ドル建て債券のデフォルトを引き起こす企業が出てくる可能性がないとは言えない。
しかし、当局は用意周到にリスクの顕在化に備えている。日米欧諸国とは違い、不動産、金融機関に対する管理能力は格段に高い。デフォルトが起きたとしても、それが原因で金融市場が不安定になることは避けられるだろう。
もっとも、海外投資家の中には、そうした当局のコントロールを疑問視する向きもあり、国際市場では一時的にボラティリティが高まる可能性がある。しかし、それはあくまでも短期的な現象に留まるのではないか、と見ている。