リース会社の「怒涛の3日間」
あとは当然ですが、候補者の地元でも突然お金が動き始めます。臨時に事務所を開く場合は、不動産屋が儲かりますし、街宣車のレンタル業者や音響機器の会社なども儲かる。選挙終盤になると生花店や酒店、仕出し屋なども儲かります。
そして、意外な儲かる人々もいます。それはリース会社です。リース会社の営業担当者はこう語っていました。
「衆議院選挙が終わってから私たちはものすごく忙しかったです。何しろ、議員会館に私たちは多くの機器をリースしていますから。コピー機、電話、ファックス、パソコン、スキャナー、プリンタなど、さまざまです。落選した議員がいると、これらの契約を終了させ、突貫で撤去をする。契約している議員の事務所にしても勝つか負けるかは分からないため、負けた直後に私たちの会社に連絡が来て、そこから怒涛の3日間が始まります」
というのも衆議院選挙が終わると、すぐに特別国会が開かれるので、それに間に合わせる必要があるのです。議員会館では、新人議員を受け入れる前に改修や清掃作業が必要となり、選挙で負けた議員はすぐに議員会館を出ていかなければなりません。負けた議員にリースしていた機器については、本来のリース期間よりも短くなるため、違約金も発生します。そして、新しい議員が議員会館に入ってきたら新たにリース契約をすることとなる。これがリース会社にとって選挙がかきいれ時の一つである理由です。
そして、議員会館の件でいえば、同時並行で引っ越し業者も突然仕事が増えるため、見積もりも高くならざるを得ないそうです。選挙って、いろんなお金が動くものなんです。
【プロフィール】
中川淳一郎(なかがわ・じゅんいちろう):1973年生まれ。ネットニュース編集者、ライター。一橋大学卒業後、大手広告会社に入社。企業のPR業務などに携わり2001年に退社。その後は多くのニュースサイトにネットニュース編集者として関わり、2020年8月をもってセミリタイア。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』(光文社新書)、『縁の切り方』(小学館新書)など。最新刊は『炎上するバカさせるバカ 負のネット言論史』(小学館新書)。