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「自宅介護は自分の性格が悪くなる」93才母に怒りを覚えた64才女性の思い

 2度目はデイサービスの日の朝。お出かけ好きな母親は5時頃から目を覚まし、「はぁ(もう)、起きてご飯にすっぺよ」と私の横で騒いでいる。「もうちょっと寝させてよ」と言って30分後に体を起こしたら、「(前夜泊まった弟の)ヒデオは朝6時にはちゃーんと、ここにお膳を持ってきたど」と、こう言うんだわ。

 この3か月、昼も夜もなく、食事とシモの世話をしてきた私を、弟を引き合いに出してまでまだコキ使うか? そう思ったら体が勝手に動き出して、家中の戸という戸をバチンッ、バチンッ!とありったけの力で開け閉めしてやった。

 その音で私の気持ちに火がついたのね。気づいたら、「調子に乗ってんじゃね~、バカが!」と母を怒鳴りつけていた。私はこれまで、親にというより、人に対してこんな暴言を吐いたことはない。

 こちらの睡眠が足りていれば、「相手は年寄りだ。真に受けるな」と怒りにブレーキをかけられるけど、寝られない日が何日も続いて疲れがたまってくると、自分の中から“黒い自分”が出てきて暴れ出す。そうなると、理性も理屈もあるもんか。

親の介護があるから自分の病院に行けない

「自宅介護をするようになってから、自分の性格がすごく悪くなった」──介護に携わったことがある人はみんなそう言う。憎しみ、怒り、怒鳴った末に殺意まで顔を出すという人も珍しくない。パワハラ、モラハラ、なんでもありだ。

 というと、体の自由がきく子供世代が介護に疲れ、一方的に老いた親に乱暴をはたらくようだけど、そんな単純なもんじゃない。寝たきりの親が娘の命を奪うことだってある。

 4つ上のYさん(当時51才)を取材のために居酒屋に誘ったら、あまりに顔色が悪くて、お酒で乾杯どころではない。聞けば、「病院に行ったら即入院なの」と言う。なのに行かないのは、「寝たきりの父親の介護があるから」だって。

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