住まい・不動産

アパート住民が家賃100万円滞納のまま退去 どうやって回収すべきか

「必ず払う」という約束だったのだが…(イラスト/大野文彰)

「必ず払う」という約束だったのだが…(イラスト/大野文彰)

 さまざまな住人を相手にする不動産経営では、時にトラブルが起きることも。家賃の滞納の長期化などは、とくに悩ましい問題だろう。そんな時の対処法を、弁護士の竹下正己氏が実際の相談に回答する形で解説する。

【相談】
 アパート経営をしています。昨年12月に家賃を滞納している住人に退去してもらいました。滞納金が100万円ほどあり、「必ず払う」という約束でしたが、いまだにまったく支払ってくれません。催促をしたくても電話にも出てもらえず困っています。支払ってもらうにはどうしたらよいのでしょうか。教えてください。(岩手県・自営業)

【回答】
 元住人には保証人もなく、敷金や保証金も預かっていないと思います。その場合、滞納家賃の回収には粘り強い交渉が必要です。返せない理由を問いただし、収入や支払い原資のあてを確認し、場合によっては分割にして、弁済の合意書を取り交わします。できれば親族などに保証人として署名してもらうなどの対応を講じたうえで、実行されなければ、法的手続きをとることになります。

 しかしあなたの場合、電話にも出ないのですから交渉はできません。そこで最初から裁判所を利用して法的に回収する方法しかありません。調停で話し合うことも考えられますが、応じなければ申し立ては無駄になります。

 強制的に滞納家賃を取り立てできるのは、元住人の財産を差し押さえ、そこから回収する「強制執行」という裁判所の手続きですが、そのためには債務名義というお墨付きが必要です。比較的簡単に取得できる債務名義は簡易裁判所の書記官に申し立てる支払督促です。方法は裁判所のホームページで調べられます。

 支払督促は元住人の住所を管轄する簡易裁判所に申し立てるので、現住所が必要です。電話だけで住所がわからなくても、元住人がアパートから退去後に転出届を出していれば、転居先の調査は可能です。

 住民登録をしておらず、いまの居所が不明の場合は、支払督促は無理で、債務名義取得には通常の裁判の提起が必要になります。しかし、居所不明の相手に対する裁判提起は困難ですし、財産を探すことも不可能ですから回収はお手上げです。

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