中国株式市場では11月に入り“元宇宙”関連銘柄が急騰している。この聞き慣れない“元宇宙”という言葉は何を意味するのだろうか。
実はこの言葉、metaverse(メタバース)の中国語訳だ。10月にフェイスブックが社名をMeta(メタ)に変更したことでも注目を集め、IT業界を中心に巨大トレンドとなりつつある。
meta(超越した)とuniverse(世界)を組み合わせた造語で、インターネット上で構築される仮想の三次元空間を意味する。その空間の中で自身の分身となるアバターを操作していろいろな体験ができるのだが、今後それが単なるゲームを超えて利用範囲が大きく広がるとみられている。
具体的には、インターネット、IoT(モノのインターネット)、AR(拡張現実)、VR(仮想現実)、AI(人工知能)、クラウド、3D画像描写などに関連する業務を行う企業がメタバース関連銘柄として取り上げられている。
関連する中国企業75社で構成されるセクター指数であるメタバース指数(同花順より)は10月28日に場中で付けた907.819ポイントを底値として急騰。その後、軽い押し目を経て11月15日には1267.406ポイント(終値)まで上昇しており、この間の騰落率は39.6%に達している。個別銘柄では、たとえば、CG、VRコンテンツを製造する恒信東方(300081)は92.2%、オンラインによる中国語のデジタル出版事業を手掛ける中文在線(300364)は83.5%、それぞれ同じ期間に上昇している。
急騰のきっかけはやはり、フェイスブックの社名変更だ。マーク・ザッカーバーグCEOは10月28日、開発者会議の席上において、事業がSNSからメタバースに広がっていることを理由に社名をMetaに変更すると発表したが、多くの中国本土投資家がこの発言に敏感に反応した。
「GAFAMの一角を占める企業のカリスマ創業者が社名に付けるほどだから、メタバースは今後、巨大市場になる」、「彼はメタバース事業を優先させると言っているので今後、この分野に巨額を投じる。そうなれば競合他社も刺激され、し烈な開発競争が繰り広げられる。市場は予想を超えた速いスピードで拡大するのではないか」などといった連想が働いたのようだ。それにいわゆる “提灯”が多く付いたことで株価は短期間で急騰したわけだ。