化石燃料を大量消費した結果、地球上の二酸化炭素濃度は高まり温暖化が進んだ。そうした危機に立ち向かう研究者の一人が、高校時代に二酸化炭素回収マシン「ひやっしー」を発明した、村木風海(かずみ)氏だ。
自らを「二酸化炭素マニア」と呼ぶ村木氏は、現役の東京大学3年生ながら化学者、発明家、冒険家の顔を持ち、独立系研究機関CRRA(一般社団法人炭素回収技術研究機構)の代表でもある。
きっかけは、小学4年生で出会ったホーキング博士著の子供向けスペース・アドベンチャー小説『宇宙への秘密の鍵』。地球以外で人類が住めそうなのは火星との記述があり、村木氏は火星に強く惹かれた。そして「いつか火星に行きたい」→「火星の大気は二酸化炭素が95%」→「二酸化炭素を回収すれば火星に住め、地球温暖化も止められる」と発想を転換し、化学者になろうと決意したのだ。
地球温暖化の最大要因である二酸化炭素を空気中から直接除去する技術は、海外で約10年前から開発が始まっていた。日本では、2014年に着手した村木氏が先駆者だ。当時、彼は中学2年生。しかも、濃度の薄い空気中の二酸化炭素をわざわざ集める手法は馬鹿げていると多くの学者が考えていた時代である。
「学会で発表しても、周囲の反応は逆風どころか荒れ狂う台風のよう。中学・高校生には資金力もないし、協力者もいない。でも、僕は自分の化学を一切疑っていないし、自分で想像できることは成し遂げられると思っていた」(村木氏)
実証実験をコツコツと重ね、ついに高校2年生時、ボタンひとつで簡単に作動できる世界最小サイズの二酸化炭素回収マシン「ひやっしー」を発明した。