テンセント、アリババなどが挙って参入
こうした動きに拍車をかけたのは、中国国内の有力企業の動きである。
テンセント(00700)は新たに“天美ZPLANプロジェクト”を立ち上げると本土複数のメディアで報じられている(9月30日)。“SNS+ゲーム”に関するプロジェクトであるが、投入する人材は1000人を超えることから、メタバースプロジェクトであることが確実視されている。
さらに馬化騰CEOは11月10日、「テンセントはメタバース技術を持つ企業を全力で探している」と発言している。テンセントのゲーム事業は当局から厳しい監督管理を受け、足元で業績が伸び悩んでいるが、最大の問題であるゲームが持つ教育面での悪影響を排除し、高成長を続けるための活路の一つとして“メタバース事業への投資”がはっきりと浮かび上がってきた。
アリババは科学研究のためのシンクタンクとして達磨院を設立しているが、そのXRラボの責任者は10月20日、2021年雲栖大会において、「今後メタバース領域に関する探索をさらに一歩進んで行う」と発言している。「AR、VRグラスは次世代のモバイルコンピューティングのプラットフォームとなり、メタバースはこのインターネット業界の新しいプラットフォーム上に出現すると理解してよいだろう」と説明している。
その他、バイドゥ、TikTok(ティックトック)をはじめ、多くのハイテク企業がメタバース事業に参入しようとしている。
メタバースの可能性をもう少し具体的に考えてみよう。たとえば日本でも、新型コロナウイルスの感染拡大中は“巣ごもり消費”が大きく盛り上がり、その中で任天堂(Nintendo Switch)の『あつまれ どうぶつの森』が大人気となった。
もし、『どうぶつの森』が実際の現実と区別のできないほどリアルなものであったらどうだろうか。この世界で土地を買う人、家を買う人がたくさん現れるだろう。この世界で使用される仮想通貨が大規模に流通するだろう。
動物の住む森ではなく、密林のジャングル、高い山の頂上に行ってみたくはないだろうか。もっと飛躍して、宇宙に行ってみたい人、天国に行ってみたい人、あるいはもう今はいない懐かしい人々が暮らす楽しかった過去に行ってみたい人……、これだけでもメタバースのニーズは無限に考えられそうだ。