こうした制度の目的は格差固定防止、つまり“貧富の格差を解消するため、お金持ちに有利な税制を見直すこと”だとされている。しかし、そのために縮小されようとしている暦年贈与や教育資金、結婚・子育て資金の贈与は、決してお金持ちだけが取り組んできた相続税対策ではないはずだ。そこには、できるだけ多くの国民から税金をかき集めようとする考えが見え隠れする。
「相続税逃れをなるべく阻止したいという国の思惑が透けて見えます。国の税収も厳しいので、あるところから取れるよう課税範囲を拡大しようという考えでしょう」
この税制改正がいつ施行されるかは、まだ誰にもわからない。だが、近い将来、贈与したつもりのお金に相続税が課せられるようになることは間違いなさそうだ。
「時期未定」だからこそ早めの生前贈与を
贈与税は廃止または縮小に向かって進んでいる一方、相続税に関する制度が変更される見込みはなさそうだ。
現在、相続税の非課税枠は「3000万円+600万円×相続人の数」。妻と子供2人なら、4800万円までは相続税はかからない。特に妻は「配偶者の税額軽減」によって、相続財産1億6000万円まで(または法定相続割合以下)は相続税がかからない特例がある。実は、ほとんどの場合、節税メリットは相続の方が大きいのだ。